春の季語(天文②)
雨について…
「春の雨」(三春)、「春雨」(三春)、「春時雨」(三春)、「春霖」(三春)、「梅若の涙雨」(晩春)、「菜種梅雨」(晩春)、「花の雨」(晩春)、「春驟雨」(晩春)
・「春の雨」と「春雨」
これらは独立した季語です(歳時記によって一つとして扱われていま)。
『三冊子』(1702年、服部土方-蕉門十哲の一人)では、本意として「春の雨」は、「正月・二月初めを「春の雨」とし、「春雨」は二月末より小止みがなく、いつまでも降り続くものと区別していました。
また本情として、「春の雨」はどこか暗さをを含むものですが、「春」という季節特有の華やぎが感じられるのに対し、「春雨」はようやく出て来た木の芽を育み、咲き誇る木の花にやさしい雨という違いがあります。
ただ現代においては、そこまで厳密に分けないでしょう。
それでは何故、今も「春の雨」と「春雨」が独立しているのでしょうか。
『三冊子』は何も蕉門の発明ではなく、連歌論書『至宝抄』、『万葉集』・『古今和歌集』の影響を受けているからです。
「春の雨」と「春雨」の違いを念頭に置きながら句作するのが得策かと思います。
一句の内容に対し「春の雨」か良いか、「春雨」が良いかは何度か推敲する方が良いでしょう。
例句
・春の雨はかたの寿司のくづれをり 角川源義
・大皿の白磁にくすみ春の雨 山咲臥竜(拙句にて失礼)
・春雨や蓬をのばす草の道 芭 蕉
・春雨や小磯の小貝ぬるるほど 蕪 村
・「菜種梅雨」
三月から四月頃、菜の花の頃に降り続く長雨をいいます。
「菜種」は菜の花の実ですから、季節は夏です。「梅雨」はいうまでもなく夏です。
それらが合わさると春の季語となるのは、不思議です。
そもそもは雨を吹んだ風を吹くんだ風を指したらしいのですが、「風」がなぜか「梅雨」になっています。
この季語も一見取っつきやすそうですが、なかなか難しく、良い例句も多くありません。
「菜の花」の黄や明るさと「梅雨」という言葉の結び付きによって生まれる、本情を探す必要があるのかも知れません。
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