【『俳壇』12月号より⑤(終)】
〈現代俳句の窓『三国行』小笠原 至〉
・達治詩碑くろぐろ光る雨月かな
…「光る」がやや気になります。「雨月なり達治の詩碑のくろぐろと」などとしても良いかと思いました。
二句目、三句目の「馬鹿の花」ですが、三好達治の「砂の砦」(1946)が有名です。
「馬鹿の花」の正確な名称は不詳です。福井県の三里浜に自生している、ハマウツボ、ハマナス、ハマヒルガオ、ハマゴウ、ハマノベギク、ハマエンドウなどと推測されているようです。
〈現代俳句の窓『土偶たち』曽根原幾子〉
・数珠玉やなにをさがして傘寿過ぐ
…「数珠玉」の配合がいいですね。「数珠玉やいまさら何を探したる」などとしてもも良いかと思いました。
〈現代俳句の窓『振袖』内藤ちよみ〉
・振袖を出しては寝かす一葉忌
…身内の不幸、金銭トラブル…許婚との突然の婚約解消となった樋口一葉の波乱の前半生と、句の内容が合っています。
「寝かす」を「寝かし」と連用止めとしても良い気がします。
〈現代俳句の窓『棉吹く』広瀬久美子〉
(なし)
〈現代俳句の窓『長崎宮日』深野敦子〉
・長坂の眠らぬままや宮日果つ
…長崎の「おくに(ん)ち」です。「宮日」は「くんち」と読みます。
助詞を少し替え「長坂は眠らぬままに宮日果て」としても良い気がします。
〈現代俳句の窓『藁の香』山本允子〉
(なし)
〈現代俳句の窓『覚満渕』吉岡好江〉
(なし)
〈現代俳句の窓『杉落葉』和田知子〉
(なし)
〈競詠・新句集の人々『秋蟬』加藤裕子〉
(なし)
〈競詠・新句集の人々『後の月』栗田ひろし〉
・朝寒のコンロに青き火の走る
…「秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな 中村汀女」を想起しました。
〈競詠・新句集の人々『秋の空』堀内淑子〉
・音消えて機影は点に秋高し
…日常の景を簡易な言葉で詠んでいます。俳句は難しい言葉を並び立てるのが良い訳ではありません。「秋高し」の選択も的確です。作句のお手本ともいうべき作品です。
〈競詠・新句集の人々『二十の娘』和田華凛〉
・秋の蝶日影に色を休めけり
…秋蝶が日影に羽の色を休めている、繊細かつ発見に近いものがあります。感性の鋭さを感じます。
好みの問題かも知れませんが、「秋の蝶」を「秋蝶の(は)、「休めけり」を「休めたり(たる)」としても良いかと思いました。
※「音消えて機影は点に秋高し 堀内淑子 」と「秋の蝶日影に色を休めけり 和田華凛」
は、旅で疲れ切った私の心に、清涼剤のような心地良さを吹き込んでくれました。
一日一句でも桂句を発見すると、その日は機嫌が良く、俳句に向かう活力となります。
※別の機会に旅行記を書くつもりですが、今回は東京と、再度湖国(湖南)へと4泊5日の旅でした。身はぼろぼろです。
比叡おろし(北颪)を浴びながら、宵闇の湖南・湖西の湖畔を歩きました。
鴨や渡り鳥の声が聞こえてきます。旅で疲れ切った心に次の句を想起しました。
病雁の夜寒に落ちて旅寝かな 芭 蕉
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