【『俳壇』12月号より④】
〈本阿弥ブックレビュー 『母の辺』髙木瓔子〉
・母の辺に雀日向ぼこ
…松本ヤチヨ氏が掲句を採っています。氏の言にもありますが、この作品群の中におけrじる「母」は、「亡母」・「先妣」です。
「妣」は本来「ひ」という音読みですが、「意味読み」で「はは」とする場合もあります。ルビを振るかどうかは作者次第でしょうか。
〈本阿弥ブックレビュー 『草結び』成井惠子〉
・内海へ袈裟懸けにくる初夏の鷹
…「内海」は「うちうみ」と読んだ方が風情が良さそうです。
「目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹 寺山修司」(「統ぶ」は文語で、他バ下二であり、連体形は「統ぶる」が適切か?)
を想起させます。
〈俳壇賞作家のいま 作品10句『壇之浦』深川淑枝〉
・狐火の遠巻きにせる戦絵図
…「狐火」の句としては、かなりリアリティーを感じます。
作者の個性を尊重した上で…「狐火の」の「の」を「は」または「を」に、「にせる」を「にして」としても良いかも知れません。
・露の世の銭をもらうて遊女墓
…浮き世の無常感が漂っています。
「もらひ(て)」のウ穏便は、「もらふ」の語尾の変化を伴い「もろう(て)」か、と思いましたが…
下五「遊女墓」は上五・中七に比べ、やや窮屈な感じがします。「遊女の墓」と字余りにしても良いかも知れませんし。
また中七から「遊女の墓」のディテール(小さい、欠けている、戒名もない、文字も判然としないなど)としても、いくつかの作品群が生まれそうな気配がします。
〈俳壇ワイド作品集『閑閑抄』瀧澤和治〉
・寒鰤を描きて旅信にはあらず
…文字という言語的伝達でなくとも、絵という非言語的伝達でも充分に旅信となります。それを理解した上での、諧謔です。行為自体も作品としての掲句もなかなか洒落ています。
〈俳壇ワイド作品集『退学届』望月とし江〉
(なし)
〈俳壇ワイド作品集『溺愛』花尻万博〉
(なし)
〈俳壇ワイド作品集『女身男神』川上良子〉
(なし)
〈俳壇ワイド作品集『蜑の畑』廣橋いたる〉
(なし)
〈俳壇ワイド作品集『水輪』澤口航悠〉
・草の市色濃き菓子を買ひにけり
〈俳壇ワイド作品集『蜜柑山』林家たい平〉
・ふぞろいの蕎麦ひきしめる井戸の水
…「ふぞろい」が効果的に蕎麦の質感を表現しています。いかにも美味そうです。江戸っ子ならでは…
※ 旅行が増え、デスクワークが滞りがちですが、何とかこなしていくよう努めます。
旅行記は別の機会に。
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