2013年11月21日木曜日

【『俳壇』12月号より④】

〈本阿弥ブックレビュー 『母の辺』髙木瓔子〉

・母の辺に雀日向ぼこ

…松本ヤチヨ氏が掲句を採っています。氏の言にもありますが、この作品群の中におけrじる「母」は、「亡母」・「先妣」です。
「妣」は本来「ひ」という音読みですが、「意味読み」で「はは」とする場合もあります。ルビを振るかどうかは作者次第でしょうか。

〈本阿弥ブックレビュー 『草結び』成井惠子

・内海へ袈裟懸けにくる初夏の鷹

…「内海」は「うちうみ」と読んだ方が風情が良さそうです。

「目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹      寺山修司」(「統ぶ」は文語で、他バ下二であり、連体形は「統ぶる」が適切か?)
を想起させます。

〈俳壇賞作家のいま 作品10句『壇之浦』深川淑枝〉

・狐火の遠巻きにせる戦絵図

…「狐火」の句としては、かなりリアリティーを感じます。
作者の個性を尊重した上で…「狐火の」の「の」を「は」または「を」に、「にせる」を「にして」としても良いかも知れません。

・露の世の銭をもらうて遊女墓

…浮き世の無常感が漂っています。
「もらひ(て)」のウ穏便は、「もらふ」の語尾の変化を伴い「もろう(て)」か、と思いましたが…
下五「遊女墓」は上五・中七に比べ、やや窮屈な感じがします。「遊女の墓」と字余りにしても良いかも知れませんし。
また中七から「遊女の墓」のディテール(小さい、欠けている、戒名もない、文字も判然としないなど)としても、いくつかの作品群が生まれそうな気配がします。

〈俳壇ワイド作品集『閑閑抄』瀧澤和治〉

・寒鰤を描きて旅信にはあらず

…文字という言語的伝達でなくとも、絵という非言語的伝達でも充分に旅信となります。それを理解した上での、諧謔です。行為自体も作品としての掲句もなかなか洒落ています。

〈俳壇ワイド作品集『退学届』望月とし江〉
(なし)

〈俳壇ワイド作品集『溺愛』花尻万博〉
(なし)

〈俳壇ワイド作品集『女身男神』川上良子〉
(なし)

〈俳壇ワイド作品集『蜑の畑』廣橋いたる〉
(なし)

〈俳壇ワイド作品集『水輪』澤口航悠〉 

・草の市色濃き菓子を買ひにけり

〈俳壇ワイド作品集『蜜柑山』林家たい平〉

・ふぞろいの蕎麦ひきしめる井戸の水

…「ふぞろい」が効果的に蕎麦の質感を表現しています。いかにも美味そうです。江戸っ子ならでは…


※  旅行が増え、デスクワークが滞りがちですが、何とかこなしていくよう努めます。
旅行記は別の機会に。

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