2013年11月26日火曜日

【『俳句』12月号より①

〈俳壇ヘッドライン〉

・泰山木咲くや白磁のごとく割れ                田島和生

…巧いですね。眼前に泰山木の花が優雅に馥郁として開くようです。
白磁(の皿)がどのようにして割れるのかは触れていませんが、おそらく窪みに掌を当て、柔らかく放射線状に押し割るのでしょう。
文芸という芸術が、真理ないし神の領域に触れる一瞬の煌めきを感じます。

〈特別作品50句『伴走』西村和子〉

・神域の水や嵐気やはしり蕎麦

掲句の「はしり蕎麦」は「新走り」に置換することはできないでしょうか。「神域」という言葉の影響で、「はしり蕎麦」>「新走り」かと思いますが、やや季語の不安定さを感じます。

・星飛べり不覚の涙こぼるごと

…眼目は「不覚の涙」です。逆にこれがなければ『巨人の星』の「星 明子(後に花形明子)」になってしまいます。
上五「星飛べり」がやや気になります。はたして星が飛ぶという表現は妥当でしょうか。ここは「星流る」でもよいかと思います。

〈特別作品21句『沈む船』仁平 勝〉

・俗物に大小のあり八頭

…八頭に対する確固たる把握あってこその作品です。
季語に添うにせよ、背くにせよ、季語の本意・本情を充分理解する必要があります。

・秋深しいたるところに道しるべ

「秋深し」を「秋の暮」としてしまいそうですが、それではやや「即き過ぎ」です。ここは「秋深し」とやや離した方が良いでしょう。
季語の選択にあたっては、こうした内容との距離感が肝要です。もちろん多くの失敗の上に成功があります。

〈特別作品21句『灯』津川絵理子〉

・人の目が畑にひそむ唐辛子

私の読み違いであれば謝罪します。
まず「人の目の」、「人の目は」でもなく「人の目が」です。
次に「畑」の必要性をさほど感じず、むしろ「唐辛子」の自由度を奪いそうです。
そして作句法ですが、もう少し読者に寄り添うことも可能かと思いますが…作者の個性かも知れません。
「潜みたる他人(ひと)のまなざし(視線や)唐辛子」、「幸せ(幸福)を妬むまなざし唐辛子」…読者に寄り過ぎでしょうか?

・マネキンにひとつ灯残す夜長かな

裏通りでしょうか。現実的に「ひとつ」かどうかは分かりませんが、「夜長」の本情を捉えています。

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