【『俳壇』12月号より③】
〈同行二人…ふたりで五十句『メデジンへ』鎌倉佐弓〉
…う〜ん、夏石番矢氏と夫婦であり、同じ俳句の仕事をして、同じ旅吟をして、それでもこれだけ作風が異なるものか、と正直驚きました。
9月のメデジンを、夏石番矢氏が「春」と捉えているのに対し、鎌倉佐弓氏は主に「秋」と捉えています。
前衛ではありますが、夏石番矢氏ほどの「凄み」にも似た強烈な個性や「メッセージ性」はやや影を潜めています。
・バナナ積み上げろ喧噪に負けぬよう
…この句に最も好感をもちました。やや観念が先行している感もありますが、その他には
・時計無き空港 天に最も近い
・坂上りきらずに月見草ひらく
〈俳人クロニクル・最終回 照井 翠〉
-新作10句『惑星』-
・向日葵のぜいぜいぜいと枯れられぬ
…下五「枯れられぬ」は、「枯る(自ラ下二)の未然形;枯れ」+「らる(助動詞・自発・可能)(ラ下二)の未然形;られ」+「ず(助動詞・打消)(活用特殊)の連体形;ぬ」です。
「冬蜂の死にどころなく歩きけり 村上鬼城」を想起させます。
・対角にはみ出し撓る秋刀魚かな
…「秋刀魚」という言葉自体に「刀」が入っていますが、どのような「刀」が似ているかと問われれば、「青竜刀」に近いものではないでしょうか。
そこを「はみ出し」「撓る」と上手く表現しています。
〈若手作家トップランナー・最終回 津久井健之〉
-新作20句『ソファー』-
まず私が最も好む三句です。
① 茶が腹にたまりてゐたる良夜かな
② 島人のおほきなあくび秋高し
③ さるすべりのつたり揺れて秋に入る
それ以外には
・丈の合ふ人の居らずや宿浴衣
・町ひとつこはれさうなる大夕立
・大夕立驚き顔と笑ひ顔
・思ひ切り顔を洗ひて帰省かな
と、20句の作品群の中に桂句が犇めいています。
感性が私と近いかも知れない、と親近感を覚えました。
もちろん彼の方が格段に巧者ですし、①の句は「匠の技」です。
私より一回り下の方が①の句を出していることで、及ばずながら私も少し向上心が湧いてきました。
やはり俳句は巧いに越したことはないですね。
僭越ながら「貂」編集長・木内 徹 様と津久井健之 様に、拙句集『原型』を寄贈させて頂きます。
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