2013年6月10日月曜日

【自句自解?『原型』駄句・失敗句  22連発】

先日、正木ゆう子氏より拙句集『原型』に対する御意見を戴きました。

全体の印象について、「…時々選の悪さを感じさせるものもあり、「S(結社)」の方々に似た詠み方もありますね…」とご指摘がありました。その前後は優しい内容です。

ご指摘の通りです。「良薬は口に苦し」の如く、批判?は賛辞より有り難いものです。
心より感謝致します。

まだ拙句集をお読みになっていない方もおられるかと思います。また100%(パーフェクト)の句集は存在しません。

まだ上梓から1ヶ月半で、客観的な評価は完全には定まっていないかも知れません。

しかし今後に活かすためにも、遅かれ早かれ己と対峙しなければなりません。
それがひいては読者に対する責任であると思います。

「やりっ放し」という行為は、他人のみならず自分を欺くことに相違ありません。
環境因(評価・賞など)などにに驕ってしまえば、作家としての生命は絶たれます。

それでは現時点で、拙句集『原型』のなかで失敗作と思う拙句を並べ、反省してみたいと思います。

① シャンパンの気泡こまやか梅月夜
…シャンパンに気泡があるのが当然です。高級なシャンパンほど気泡の肌理が細かいという事実はありますが、ここでは気泡も、気泡の説明も不要です。つまり中七は不要です。

② 水ぬるむ頃やをみなの蜜もまた
…露骨なる「エロス」です。ただ今後もこうした要素を完全に消そうとは考えていません。私の個性の一部と思うからです。

③ 高千穂や記紀このかたの山霞
…まず「瓜人先生羽化このかたの大霞 能村登四郎」に似ています。
記紀の編纂より霞が立ちこめた訳ではなく、それより昔の「天孫降臨」((邇邇藝命(ににぎのみこと)が高千穂に天降)以降の筈です。ここに無理があります。

④ たをやかに爪弾く琴や花月夜
…表面的であり、背後の作者の姿が見えません。「チチポポと打うたうよ花月夜 松本たかし」の下手なコピーです。

⑤ 汝が乳首緑雨に透けり抱き寄する
…画像や音楽にありそうな陳腐な「エロス」です。青春性も感じません。

⑥ ポリバケツ倒れて屑や梅雨深き
…梅雨の時期にようありそうな光景ですが、直裁的な割に「発見」に乏しいものです。
他の素材で作り替えるべきです。

⑦ 煙りゐる島より船や梅雨青き
…「青梅雨」とし、船の白さとのコントラストに焦点を絞った方が良いかと思います。

⑧ 魔の潜む気配ありけり日の盛
…「半眼にして」とすれば多少体裁はよくなるでしょうが、そもそも発想自体が古いと思います。「夏真昼死は半眼にして人を見る 飯田蛇笏」

⑨ 芥浮く市井の川や夏夕べ
…明らかに現代の風景ではありません。「市中は物のにおひや夏の月 凡兆」の影響はありますが、やはり夏の夕べは「涼しさ」を旨とすべきでしょう。拙句はむしろ「暑い」。

⑩ 空蟬や葉裏を掴み揺れやまぬ
…「空蟬」が活きていません。「葉の裏に空蟬のあり(ありぬ)揺れやまず」とすれば、少しは「空蟬」の本情が出る気はします。ただ二句一章の形であり、正木ゆう子氏の指摘するところの「S調」かも知れません。

⑪ 平曲を奏づる琵琶や萩の風
…「秋の風」とすれば「即き過ぎ」になるので「萩の風」にしましたが、全てが良くありません。

⑫ 月光を浴み白萩のこぼれそむ
…「月光に打たれ白萩こぼれそむ」の方が良かったかも知れません。

⑬ 焼き切るる前の閃光曼珠沙華
…焼き切れるのはニクロム線などですが、「閃光」より「まぶしさ」、「まばゆさ」、「煌めき」の方が良かったかも知れません。

⑭ つまづけるレコード針や夜長なる
…陳腐、古い。

⑮ ふんだんに露蹴散らして明けの犬
…中七「露蹴散らして」を「露を蹴散らし」とすることに抵抗を感じるのが、良いか悪いかは別にし、染みこんだ習慣です。「蹴散らす」という漢字は「露」と離した方がよさそうです。外見上、「露」の存在感が薄れます。また上五「ふんだんに」はオノマトペか近似するものですが、オノマトペを上五に据えると失敗することが多いものです。
「白露をふんだんに蹴散らしぬ(せり・せる)」などでしょうか。「これだと「明け」は要りません。

⑯ だしぬけに下水ひびける夜寒かな
…これも「下水」と「ひびく」をひっつけています。シンプルに中七は「下水のひびく」でしょうか。また「下水」より「下水管」でしょうか。「だしぬけ」も良くない。「下水管不意に響ける夜寒かな」「夜寒なり不意にひびける下水管」などでしょうか。

⑰ これよりは鬼の棲むべし夕紅葉
「夕紅葉」を「夕桜」にしても通じます。季語が不安定なのです。また「この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 三橋鷹女」をすぐに連想させます。せめて「夕紅葉」を「紅葉山」とすべきでしょう。

⑱ 思ひ出や木の実時雨に佇めば
…駄作です。手の施しようがありません。

⑲ うまいには一人がよろし浮寝鳥
…「うまい」は「旨寝・熟寝」と書きます。浮寝鳥と「即き過ぎ」です。これも駄作です。

⑳ 触れゐたる白磁の皿や冬日和
…白磁の皿どうしが触れ合っているのですが、これでは何に触れたのかが分かりません。
せめて「触れ合へる白磁の皿や冬日和」とすべきでしょう。

㉑ 寒濤や重低音がチューバより
…その前の「はらわたの打ち震へてや冬怒濤」と同じ内容で、かつ駄作です。「チューバ」が「重低音」を出すのは当たり前です。手の施しようがありません。

㉒ 剣呑む大道芸や寒の水
…発見も意外性もなく、面白くありません。テレビを見て作ったような句?です。リアリティーもなく、作者の存在が見えてきません。駄作です。

拙句集『原型』収録の200句のうち22句という1割以上が駄作です。
振り返ってみて、その数の多さに驚くと同時に、正直自己嫌悪に陥ります。
良い句(と思われる)と駄作とのギャップが激しいと感じました。

それでもいい勉強になりました。

改めて良くも悪くも、今の自分の力量相応の句集かと思います。

句集をまとめる時は、何度見直しても、一人では限界があるのは確かです。
また「うんざり」した気分も付きまといます。

それでも次の句集(200句)では、駄作の量をせめて10句(5分)にしたいところです。

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