【角川『俳句』7月号より⑤(終)】
〈角川俳句賞作家の四季 『大使館』広渡敬雄〉
・いつもより早き夕刊燕の巣
…下五のきごを「つばくらめ」や「燕の子」と替えてみると、朝昼の景には合いそうですが、夕方の景に合いません。ここは「燕の巣」とするとするのが良さそうです。
掲句では、親鳥や雀の子や巣の状態などのディテールを敢えて説明せず、夕方の景に委ねています。
一句のなかでディテールを説明するか、略すかのいう問題は、やはりケースバイケースと言わざるを得ません。
〈俳人スポットライト『虻忙し』森田純一郎〉
・満開にあらざるはなき牡丹かな
…牡丹の花弁が大きく開く時と、散る(崩れる)時です。牡丹は「満開」という状態が似つかわしくない花の一つです。
〈俳人スポットライト『伊達・春から夏へ』譽田文香〉
(なし)
〈俳人スポットライト『新樹』今野志津子〉
・こんにやくの句碑に玉巻く芭蕉かな
…「こんにやくの句碑」とは「こにやくのさしみも些(すこ)しうめの花 芭蕉」の句碑。
〈俳人スポットライト『おたおたと』石川日出子〉
・柩いっぱい花満ち忘れものないか
…無季・新かなが続いています。百合か菊か蘭などの花でしょう。
「忘れものないか」という疑問文の措辞は、故人に対してでもあり、本人自信に問うているようです。「忘れもの」のなかには「思い残すこと」という意味も含まれていることでしょう。
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