【賀状書く・岸本尚毅氏】
・新日本大歳時記・冬(講談社 1999年刊)より
〈賀状書く〉;…「新年の御慶めでたく申し納め候」と書いていたが、年賀郵便の普及した明治末には葉書向けの「謹賀新年」などになった…(季語解説執筆者;坪内稔典氏)
・角川俳句大歳時記・冬(角川学芸出版 2006年刊)より
〈賀状書く〉;十二月の忙しい日々のなかで、少しずつ時間をつくって賀状を書く。印刷にしろ、絵や版画にしろ、相手を思い、記憶を辿りながら丁寧に賀状を書くのは、元日に届く賀状を読む喜びを知る民族の血ゆえか…(季語解説執筆者;西村和子氏)
・知らぬ子と遊ぶ吾が子や賀状書く 岸本尚毅
・日本の大歳時記(小学館 2012年刊)より
〈賀状書く〉;慌ただしい十二月、何とか時間を見つけて賀状(年賀状)を書き、元日に届くよう早めに投函する。かつては目上の人には墨守でしたため、仲間には芋版で作って送り、親戚には近況報告を多めにするなどして、平素の無沙汰を詫びる気持をこめて書いたものだった…
・世のつねに習ふ賀状を書き疲る 富安風生
類に洩れず私も賀状を書いています。
表の宛名書き(ワープロ)だけでも既に70枚をこえました。
気持ちは富安風生の句と同じです。
振り返らずとも分かりますが、今年の私のデスクワークのほとんどは、俳句の本道とはかけ離れたものばかりでした。
今年は拙句集を上梓し、寄贈した方々からの有り難い御返信(葉書・封書・ネット)を戴いており、社会人としての最低限のマナーとして賀状を書いています。
さて…「知らぬ子と遊ぶ吾が子や賀状書く 岸本尚毅」は句集『健啖』に収録されています。
季語の本意・本情を踏まえつつ、内容と季語の絶妙な距離感に感心します。
ただ俳句に携わっていない一般の方や初学者には充分な理解は難しいかも知れません。
『現代俳句の海図-昭和三十年代俳人たちの行方』(小川軽舟箸 角川学芸出版 2008)より一部(p.191〜192)を抜粋します。
・盆の波ゆるやかにして響きけり
・健啖のせつなき子規の忌なりけり
・淋しさはわが子と遊ぶ春の暮
・火のかけら皆生きてゐる榾火かな
「これらの作品のなつかしい読後感は、二十代半ばまでの岸本の俳句の鋭利な手触りとは明らかに違う。その季語のなつかしさの拠り所が季語の情緒であることは一目瞭然である。「盆の波」「子規忌」「春の暮」「榾火」という季語の情緒はけっして殺がれることなく一句を満たしている。岸本の作品にはかつて見られなかった現世への愛着が感じられる。実はそれは、前句集に〈末枯に子供を置けば走りけり〉〈啄木鳥や妻にも二つ膝小僧〉といった妻子を読んだ桂句が見られるようになって既に感じられたことだ。岸本も人の子になったと言えようか」
僭越ながら上記の「賀状書く」の句を含めた5句で、私の好む順を述べます。
① 淋しさはわが子と遊ぶ春の暮 ② 知らぬ子と遊ぶ吾が子や賀状書く ③ 健啖のせつなき子規の忌なりけり ④ 盆の波ゆるやかにして響きけり ⑤ 火のかけら皆生きてゐる榾火かな
12月はそもそも気忙しい時期です。年末・年始は超大型連休になりますが、景気の回復感も手伝って今から旅行(宿)の予約をするのも一苦労です。
私は12/27には旅(山陰)に出て、そのまま九州の本家に一泊し、また山陰に行く予定です。広島に戻る?のは1/6となります。計11日間の旅となります。
その間に次の旅(北海道)の日程を考えます。
旅は己を省みる機会であると同時に、詩嚢を満たしてくれます。
その場でふっと句がわけば残しておきますが、旅先の景の一部を切り取り作句しようとは思いません。そのことより、その土地の醸す「風土」や「(広義の)空気」を何となく掴めれば幸いと考えています。
「骨」や「骨法」が掴めれば、「肉」や「肉付け」は机上で充分出来ます。
0 件のコメント:
コメントを投稿