2013年12月17日火曜日

【『俳壇』1月号より①・暗唱句-新年】

〈新春巻頭作品7句『流れ行く時』有馬朗人〉


・簫火に静もる波や神の旅


…簫火により白波や沖のうねりはよく見える筈ですが、視覚が働くことにより波の音すなわち聴覚は抑制され、「静か」と感じるかも知れません。


〈新春巻頭作品7句『初日』今瀬剛一〉


・初電話この波音を聞けといふ


…電話口の相手は子や孫ではなく、おそらく旅行先の友人でしょう。電話を介し、その場にいるような感覚を頂戴するかのようです。淑気に満ち新年詠に相応しいと思います。


〈新春巻頭作品7句『初御空』鍵和田秞子〉


・落葉ながら白磁売らるる光かな


〈新春巻頭作品7句『武蔵野に』金子兜太〉


・隣の家赫ッと陽当り実千両


…中七から下五へと躍動的なリズム感があります。さながら「値千両」と言っているようで、俳諧の談林派を連想します。


〈新春巻頭作品7句『アンパンマン』坪内稔典〉


・鳥籠は空っぽ正月の老人も


〈新春巻頭作品7句『草石蚕』行方克巳〉


・猿曳きのづけづけと世を断じたる


…諧謔が効いています。「この猿曳きめが」、「猿曳きの分際で」などと怒号が聞こえてきそうです。


〈新春巻頭作品7句『船宿す』原 和子〉


・国振りの岩海苔かさと音立つる


…小潮(新月)の頃の岩礁でしょうか。岩礁に付着し乾燥した岩海苔の景が見えてきます。


〈新春巻頭作品7句『百歳目指せ』松本 旭〉


・初凧を揚げよ嫡孫婚約す


〈新春巻頭作品7句『自在鉤』黛 執〉


・二日はや畦より上がる老いの声


〈新春巻頭作品7句『輪飾』山本洋子〉


・みどり子を置いて大根引きにゆく


…「みどり子」と大根の色の対比にとどまらず、畑であらたな「みどり子」を産むかのようです。


〈俳句と随想十二ヶ月・一月『敗荷』安立公彦〉


・相寄りて夕日浴びゐる木守柿


〈俳句と随想十二ヶ月・一月『記憶』渡辺純枝〉


・猪罠を掛けて山門しづかなり


〈暗唱句-新年〉

時候〈新年〉

・年いよよ水のごとくに迎ふかな           大野林火
・歳明くる濤音国の四方つゝむ            長谷川素逝
・年迎ふ山河それぞれ位置につき           鷹羽狩行      (☆)

天文〈初空〉

・初空へさし出す獅子の首(かしら)かな       一 茶       (☆)

地理〈初景色〉

・たちまちに火の海となり初景色           鷹羽狩行      (☆)

重要季語3、暗唱句5です。

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