少し体調が良くなった気はしますが、まだ全身倦怠感が強いままです。
角川「俳句」二月号特別作品50句 『単身赴任』 小川軽舟 より
どの句も生活に密着してはいますが、不快な生活臭はしません。
私が採ったのは次の句です。
・職場ぢゆう関西弁や渡り鳥
・妻来たる一泊二日石蕗の花
・公園に大人ばかりの小春かな
・凩や間口あらはに自転車屋
・定食に満腹したる聖夜かな
・靴墨のつんと香のたつ淑気かな
・住む町を見下ろす神社初鴉
・がんばりの利く古釘や日脚伸ぶ
一句目…作者の戸惑いと離人感を感じます。下五は「鳥渡る」でも良いのではと思いますが、「渡り鳥」としています。やや自虐めいた作者自身の隠喩かも知れません。
二句目…「石蕗の花」の明るさが心細い心に差し込む様子が伺えます。「石蕗の花」の配合が見事です。
三句目…現代の世相を表しています。見慣れた風景でも所変われば改めて違和感を覚えるものです。
四句目…自転車屋の暗さ、古い部品、奧の居住スペースまで見えてきそうです。「凩」の配合が見事です。
五句目…クリスマスを気にせず淡々とした企業戦士?の外面です。内面は分かりませんが、それほど侘びしさは伝わってきません。
「へろへろとワンタンすするクリスマス 秋元不死男」こちらは侘びしさが漂います。
六句目…淑気を靴墨の香に感じています。お屠蘇気分の社会人に比べ、新たなる土地、職場を迎え、前向きに仕事に向き合う姿勢が滲み出ています。
七句目…見下ろしているのは作者ですが、「初鴉」も作者の投影かも知れません。
八句目…古釘は長く感じられた冬や、その冬を生き抜いた作者の隠喩かと思われます。「何とかこの冬をしのいだ、もうすぐ春だ」と作者が自身に言い聞かせているように感じられます。
・行秋や漱ぎてにほふ歯磨粉…「行秋」にやや疑問が残りました。
その他気になった句は
・行秋や漱ぎてにほふ歯磨粉 ・綿虫のあたりきのふのあるごとし
・折詰の紐つまみたり年忘 ・小晦日用足して町暮れにけり
・雪降るや雪降る前のこと古し ・ゆらゆらと重さありけり寒卵 です。
0 件のコメント:
コメントを投稿