何とか風邪から離脱しました。
健康に越したことはありませんが、病があるからこそ、普段はあまり気にかけない健康の有り難さが分かります。
直木賞作品「何者(なにもの) 浅井リョウ」(新潮社)を読みました。やや普遍性に欠く舞台設定ですが、就活に喘ぐ若者らの姿が描かれています。
ラストにやや不満は残るものの、人間関係の希薄さ、若者の不安定なアイデンティティー、現在社会の抱える歪みや閉塞感を感じました。
さて日本の詩歌では古くから「雪月花」という「三種の景物」を重んじてきました。
白居易の詩「寄殷協律」の一句「雪月花時最憶君(雪月花の時 最も君を憶ふ)」に依ります。
日本三景や日本三名園はその影響を受けています。
日本三景;雪-天橋立、月-松島、花(紅葉を花に見立てる)-宮島
日本三名園:雪-兼六園、月-後楽園、花(梅)-偕楽園
やがて「雪月花」に、ほととぎす・紅葉を加え、「五箇の景物」と言われます。
「春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえてすずしかりけり 道元」「道元禅師和歌集」
いずれにしても「雪」は日本の詩歌を語る上で欠かせない存在です。
雪の「ユ」(斎)は神聖という意味があります。稲を司る神の便りと考えたからです。
「雪」の例句を列記します。
・雪に獲したなごぞ雪のにほふなる 篠田悌二郎
・雪はげし抱かれて息の詰まりしこと 橋本多佳子
・降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男
・雪降れり時間の束の降るごとく 石田波郷
・おびたゞしき靴跡雪に印し征けり 沢木欣一
・雪激し何の夾雑物もなし 津田清子
・南無阿弥陀南無の高さに雪の墓 仲 寒蟬
・口寄せに呼ばれざる魂雪となる 中原道夫
・泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
・まだもののかたちに雪の積もりをり 片山由美子
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