若手作家ブームについて
今から約四半世紀前の昭和六十一年頃、飯田龍太は『俳句研究』『俳壇』において、小林恭二は『文藝春秋』や著書『実用青春俳句講座』において、二十代・三十代の若手俳人を取り上げました。
小林恭二が取り上げた俳人は、夏屋番屋、小澤實、田中裕明、岸本尚毅、長谷川櫂、山田耕司などで、今や俳句界を担っている面々です。この時点では女性は一人も取り上げられていません。
飯田龍太が特に称賛したのが、小澤實と岸本尚毅です。
・夏芝居監物某出てすぐ死 小澤 實
・浅蜊の舌別の浅蜊の舌にさはり 同
・青大将実梅を分けてゆきにけり 岸本尚毅
・てぬぐゐの如く大きく花菖蒲 同
そして多くの俳人らの後押しもあり、世代交代さながらに(第一次?)若手作家ブームが起こりました。
そして今、(第二次?)若手作家ブームが起きています。
しかし先の若手作家ブームと現在のそれには違いがあります。
先の若手作家ブームは、将来の俳句界を牽引するであろうニューリーダーの発掘という気運がありました。また若手作家の活動は俳句界の範疇に収まりました。
現在の若手作家ブームは、ともすれば文芸性より話題性が優先されます。彼らの活動(アピール)の場は俳句界に収まりません。
これらはネットをはじめとした社会現象の変化に加え、商業ベースの介入に依るところももあります。
しかし肝腎の若手作家が、そのことに気付いていない例も見受けられます。
現在の若手作家ブームに諸問題が存在するのは事実です。
しかし最も重要な課題は、彼らが四半世紀後に俳句界を担う存在になるか否かということです。
四半世紀後といえば、現在の団塊の世代の影響も薄れ、「結社」そのものが激減する可能性は高いでしょう。
四半世紀後、私も七十才を越えますが、おそらく生きています。
社会や私個人も変わるでしょう。それでも俳句界の変遷や現在の若手作家の動向は知ることが出来ます。
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