2013年2月11日月曜日

俳句を読むこと・詠むこと

・白藤や振りやみしかばうすみどり       芝不器男

原句は「白藤や」のようですが、歳時記によっては「白藤の」と掲載されています。

どちらにせよ一物仕立てですが、個人的には「白藤の」の方が良いように思います。

先に「切れ」を表しますと
(弱)/白藤や(強)/振りやみしかば(弱)/うすみどり/(弱)

句の前後の「切れ」はどの句にも存在します。
句中は、上五「白藤や」でやや強い「切れ」、中七「振りやみしかば」で弱い「切れ」があると思います。

上五は「白藤+助詞」、下五は「体言」です。
上五の「や」か「の」かの問題は、続く中七の構造にあります。

「振りやみしかば」…「降る」(動詞)+止む(動詞)+しく(動詞)+ば(助詞)
上五・下五に比べ多くの動詞(用言)が用いられています。
このように中七は窮屈となっています。

その中七に対し上五に「や」を用いると余計に暑苦しく感じるのです。

この句は中七に動詞が三つ入っています。
一般に一句の中に用言(動詞・助動詞・形容動詞)が三つ以上入ると説明的となり、成功する率は低下します。むしろ用言を極力控えた作句の方が成功しやすいとも言えます。

掲句は例外とも言え、残念ながら勧められません。

ならどうするか…体言や助詞(「切れ字」も含む)を適切に用いつつ、「切れ」により句の奥行きを出すという方法が効果的です。
これは俳句の作句法における要点の一つかも知れません。

次に「しかば」の用法を考えてみます。
「ば」に「しく」(動・四段)の未然形「しか」を用いています。
「ば」は「順接の仮定条件」となります。
「揺りやんだなら」という意味となり、「常に揺れている」ということが前提です。

「ば」に「しく」の已然形「しけ」を用いる方が素直な感じがします。
「ば」は「順接の恒常条件」となります。
「揺り止んだとすると」という意味になります。

しかしながら作者は意図的に「揺れ止まない白藤」のイメージを与えたかったのかも知れません。

この句を暗唱している人は少なくありません。ただ俳句という短詩型では一文字の重要性が必然的に増します。
「習うより慣れろ」は最初は有効かも知れません。しかし名句を吟味・検討することことは、向上する要因の一つになります。

最後に私の初学の頃の話をします。
揺れていない眼前の白藤を長い間観察しました。
しかしどう見ても、白藤が「うすみどり」に見えない。
その後に「うすみどり」とは藤房の蔓と白い花弁の重なり合った色であり、掲句はやや遠景であることを知り愕然とした記憶があります。

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