2013年2月28日木曜日

【角川「俳句」3月号より②】

〈特別作品21句 「復活」 筑紫盤井〉

・胡桃割る女はこはし一途なる

・老人の遠きまなざし怖ろしき

一句目…「胡桃」はの陰嚢、睾丸の隠喩かと思います。
「阿部定事件」にも通じる「女の情念の深さと執拗さ」を感じます。
特に下五の「一途なる」は説得力があります。
「こはし」と他人事のようにいなしていますが、それなりに自分の股間に注意が向いている作者の姿が浮かぶようです。

二句目…「老人」のまなざしはは現実の景でも「あの世」に向けられたものではないと思います。茫漠とした弱々しいまなざしでしょう。
間もなく「高齢者の部類」に入る作者は、その「老人」(親かも知れません)に、自分の今後を投影し「怖ろしき」と言っているようです。

気になったのは「僕たちのファンがあつまり雷と鳴」という句の下五です。
「雷鳴」や「雷響」でもなく「雷と鳴」と分けています。
「雷(夏)」は主に「音」を重きを置いています。春の雷・冬の雷もそうです。「迅雷」となれば青白い光も反映します。

一方「稲妻(秋)」は主に「光」を重きを置いています。代表的な言葉が「稲光」です。
確かに雷でも稲妻でも、先に光り、数秒後に音が来ます。

「雷と鳴」という措辞には「雷」は光を持たせているのかも知れません。

余談です。「アリス」の代表曲「冬の稲妻」や、ジャニーズ(近藤真彦氏?)の歌のサビに「冬の稲妻」とありますが、厳密に言えば疑問が残ります。
また元プロレスラーの故・木村健悟氏の必殺技「稲妻レッグ・ラリアート」は、「秋」限定でも良かったかも知れません。

〈特別作品21 「深藍」井上弘美〉

・ひと網の蛸のうごめく雪の上

網による蛸漁を知りませんが、おそらく数匹のやや小ぶりの蛸でしょう。
蛸が雪の上をうごめく景が浮かんで来ます。「腕(触椀)」を使えない状況です。
雪の白色と蛸の茶褐色の対比。蛸の茶褐色はそこだけ「雪解」した土のようです。しかもうごめいている。
また蛸の頭も腕もその吸盤も雪により、縮こまっている景も見えます。

蛸にとっては災難ですが、その蛸を薄切りにし軽く茹で、上質の濃口醤油か西京味噌をベースにした酢味噌でその甘さと歯ごたえを堪能したいと思うのは私だけでしょうか。
シャンパン(スプマンテ)か、やや辛口の白ワイン(リースリングか比較的若いシャルドネ)が相性が良さそうです。

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