2013年3月1日金曜日

【角川「俳句3号より③】

〈作品16句「梅だより」鈴木鷹夫〉

・松取れて時間の速度早まりぬ…「松納め」でなく「松取れて」が良いと思いました。

〈作品16句「生きて負ふ」 小檜山繁子〉

・先す撫づる初俎板の傷の数

〈作品八句 「竜の玉」高田風人子〉

・探し得し二粒なれど竜の玉

「ポイステも今は日本語寒の内」…季語の動揺性があるかと思います。例えば「冴返る」でも良いかも知れません。「ポイステ」と括弧しても良いかも知れません。

〈作品八句 「春の雨」中山純子〉

・終い風呂おとす音して四温かな
…風呂の排水口に流れる湯の音を四温と捉えています。「水温む」に近い感覚があるのかも知れません。

〈作品八句 「ドヤ顔」高橋龍〉

・戦争を組み立ててゐるプラモデル

…確かにプラモデルのマニア(私も以前そうでした)は、タミヤ製?の旧ドイツ軍の戦車やジオラマが好みます。そのこと自体は直接戦争には関わりありませんが、日常の生活に忍び寄る暗雲の兆しとも感じられます。「ガンプラ」とは大きく違います。

〈作品八句 「時の景物」岩永佐保〉

・猫の子の眼ひらきてみな名なし
…猫は一度に6〜8匹の子を産みます。ただその子猫を全て面倒みきれないので、その多くを信用できる?他者に渡すことになります。だから名前をつけていないのです。「眼ひらきて」に作者の焦りを感じます。一匹は飼うつもりの子猫がいるかも知れません。その子猫にはうすうす名前を考えているのかも知れません。

「指長きをとこの煙草冬の川」…季語の動揺性を感じます。もう少し官能的なストーリー展開を予感させる方が良いかと思います。

〈作品八句 「白鳥」太田土男〉

・山風にけもののけはい干大根…山風が運んでくるのですから、「けはい」より「にほひ」の方が良いかと思います。

「凍豆腐犬の遠吠続きけり」…上記と似た内容ですが、「けり」よりも「をり」の方が、景がよく見える感じがします。

〈作品八句 「紐」岡田史乃〉

・かの子の忌太郎をしばる紐さがす
…忌日にしなくてもよさそうですが、岡本かの女氏が息子である太郎氏を溺愛し、心身共に束縛する姿が浮かびます。

【〈新鋭俳人20句朗詠】

〈「ビニル紐」小川春休〉

・らつしゃいと帳簿つけつつ飾売」
…季語にやや動揺性がありますが(他の年末の市等)、上五「らしゃい」のアクセントや巻き舌まで分かりそうです。年末の商いの勢いが感じられます。この「らつしゃい」という言葉はかなり効果的です。生活感と共にある種の懐かしさを感じを感じます。

・数へ日や初校またたく間に赤く
…実感がこもっています。つい先日までの私の姿を重ね合わせてしまいます。「数へ日」という季語のの選択がいいですね。焦燥感が伝わりますが、それでもどこか切迫感とは違うある種の「開き直り」を感じます

・網の肉剥がれがたくて年忘
…「年忘(会)」での網に貼り付いた肉は、特に社会生活における、割り切れない感情や引き摺ったままの思い等の隠喩でしょう。俳句と社会生活のバランスを取りながら生活している作者の姿が見えてきます。
*今回の全ての作品群の中で一番かと思います。

〈「短日」鈴木まゆう〉

かわいいので全て「優」としたいのですが…残念ながらそうもいきません。

・藁塚のちょんまげふたつ向き向きに…下五の「向き向きに」という措辞に、作り慣れている感じがします。

・重ね着のそれごと脱いでしまいけり
…「それごと」がいいですね。「重ね着」に合います。言葉を大事にしています。これを「まるごと」とすると「着ぶくれ」の感がし、「雑」な感じとなります。場所は家または実家でしょうが、夫や恋人の部屋でも面白いか思います。

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