「壺焼の腸勾玉の原型か」…上梓間近になって、拙句集の冒頭句に苦悩しました。
そもそも「原型」という言葉を中心にしたコンセプトのもと、全体を構成しました。
しかし結果として大きな失敗でした。コンセプト自体の誤りでもあります。
自戒を含め話をします。
「壺焼の腸勾玉と思ふべし」…原句です。
この時は下五の「思ふべし」、特に「思ふ」が気に入りませんでした。一般に下五に動詞「思ふ」が入ると、緊張感が弛緩し「尻すぼみ」の印象を与えます。
「壺焼の腸勾玉の原型か」…次に「原型」という語を用いました。
「原型」という言葉の多義性を重要視し、そのコンセプトで全体を組み立てました。
タイトル、冒頭句、帯の表・裏もそれに合わせました。
ところで十七文字は、四つの名詞による十四文字と三文字の助詞という構成です。
下五の枠に「原型」という四文字の名詞が入ることにより、詰め込み過ぎで窮屈な感じとなりました。
「壺焼ノ腸勾玉ノ原型カ」…「ならば窮屈なら窮屈で、より硬質な感じを」と思い、助詞をカナ表記としました。
しかし末尾の「カ」が「力」に見えますし、疑問文としては「カ」より平仮名の「か」の方が良く見えます。
「壺焼の腸勾玉の原型か」…最後はここに落ち着かざるを得ません。
さんざん足掻いたあげく、この始末です。
自分で仕掛けた罠に自分が捕らわれたような気分です。自嘲する他ありません。
推敲の過程で悪い方向となっています。原句の方が良いと思います。
「原型」でなく、「別のもの」を支柱にするべきでした。
しかし大局的に見れば、こうした苦い思いは「句集」を編む過程で生じたことであり、道半ばにしてよい経験をしたのかも知れない、と思ってもいます。
今回の「誤算」を明日への「糧」とする所存です。
〈暗唱句 ⑮〉
植物
〈蓬-三春〉
・籠(こ)の蓬抑へおさへてまだ摘める 鷲谷七菜子 (☆)
・生国はここかもしれず蓬摘む 宇多喜代子
・越前の蓬は粗し海女の径 宮田正和
〈片栗の花-初春〉
・どの花となくかたかごのか昃(かげ)りたる 深見けん二 (☆)
・かたかごに銀(しろがね)の日の懸りをり 石田勝彦
・かたくりは耳のうしろを見せる花 川崎展宏
・かたくりの花には強し山の風 堀 文子
〈水草生ふ-仲春〉
・水草生ふ水深きことかなしまず 山口青邨
・水草生ふひとにわかれて江に来れば 日野草城
・たたずみてやがてかがみぬ水草生ふ 木下夕爾 (☆)
・水草生ふ後朝のうた昔より 藤田湘子
・ほの暗きこの世うかがひ水草生う 片山由美子
〈蘆の角-仲春〉
・見え初めて夕汐みちぬ蘆の角 太 祇
・日の当る水底にして蘆の角 高浜虚子
・やゝありて汽艇の波や蘆の角 水原秋桜子 (☆)
〈海苔-初春〉
・衰ひや歯に喰あてし海苔の砂 芭 蕉 (☆)
・海苔あぶる手もとも袖も美しき 瀧井孝作
一旦これにて終了です。お疲れ様でした。
これで重要季語83、例句230です。
角川俳句大歳時記の重要季語のみピックアップしました。
ただ確かにこれでも洩れはあります。
これから新日本大歳時記(講談社)から洩れを掬い、補足していきましょう。
最終的に暗唱する季語を100、例句を300程度に絞りこみ、更にコンパクトにまとめていくつもりです。
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