2013年3月23日土曜日

【誤算と明日の糧】

「壺焼の腸勾玉の原型か」…上梓間近になって、拙句集の冒頭句に苦悩しました。

そもそも「原型」という言葉を中心にしたコンセプトのもと、全体を構成しました。
しかし結果として大きな失敗でした。コンセプト自体の誤りでもあります。

自戒を含め話をします。

「壺焼の腸勾玉と思ふべし」…原句です。

この時は下五の「思ふべし」、特に「思ふ」が気に入りませんでした。一般に下五に動詞「思ふ」が入ると、緊張感が弛緩し「尻すぼみ」の印象を与えます。

「壺焼の腸勾玉の原型か」…次に「原型」という語を用いました。

「原型」という言葉の多義性を重要視し、そのコンセプトで全体を組み立てました。
タイトル、冒頭句、帯の表・裏もそれに合わせました。

ところで十七文字は、四つの名詞による十四文字と三文字の助詞という構成です。
下五の枠に「原型」という四文字の名詞が入ることにより、詰め込み過ぎで窮屈な感じとなりました。

「壺焼ノ腸勾玉ノ原型カ」…「ならば窮屈なら窮屈で、より硬質な感じを」と思い、助詞をカナ表記としました。
しかし末尾の「カ」が「力」に見えますし、疑問文としては「カ」より平仮名の「か」の方が良く見えます。

「壺焼の腸勾玉の原型か」…最後はここに落ち着かざるを得ません。

さんざん足掻いたあげく、この始末です。
自分で仕掛けた罠に自分が捕らわれたような気分です。自嘲する他ありません。

推敲の過程で悪い方向となっています。原句の方が良いと思います。
「原型」でなく、「別のもの」を支柱にするべきでした。

しかし大局的に見れば、こうした苦い思いは「句集」を編む過程で生じたことであり、道半ばにしてよい経験をしたのかも知れない、と思ってもいます。
今回の「誤算」を明日への「糧」とする所存です。

〈暗唱句 ⑮〉

植物
〈蓬-三春〉
・籠(こ)の蓬抑へおさへてまだ摘める         鷲谷七菜子   (☆)
・生国はここかもしれず蓬摘む             宇多喜代子
・越前の蓬は粗し海女の径               宮田正和

〈片栗の花-初春〉
・どの花となくかたかごのか昃(かげ)りたる      深見けん二   (☆)
・かたかごに銀(しろがね)の日の懸りをり       石田勝彦
・かたくりは耳のうしろを見せる花           川崎展宏 
・かたくりの花には強し山の風             堀 文子

〈水草生ふ-仲春〉
・水草生ふ水深きことかなしまず            山口青邨
・水草生ふひとにわかれて江に来れば          日野草城
・たたずみてやがてかがみぬ水草生ふ          木下夕爾    (☆)
・水草生ふ後朝のうた昔より              藤田湘子
・ほの暗きこの世うかがひ水草生う           片山由美子

〈蘆の角-仲春〉
・見え初めて夕汐みちぬ蘆の角             太 祇
・日の当る水底にして蘆の角              高浜虚子
・やゝありて汽艇の波や蘆の角             水原秋桜子   (☆)

〈海苔-初春〉
・衰ひや歯に喰あてし海苔の砂             芭 蕉     (☆)
・海苔あぶる手もとも袖も美しき            瀧井孝作

一旦これにて終了です。お疲れ様でした。
これで重要季語83、例句230です。

角川俳句大歳時記の重要季語のみピックアップしました。
ただ確かにこれでも洩れはあります。
これから新日本大歳時記(講談社)から洩れを掬い、補足していきましょう。

最終的に暗唱する季語を100、例句を300程度に絞りこみ、更にコンパクトにまとめていくつもりです。

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