2013年3月2日土曜日

【角川「俳句」3月号より④】

〈作品12句 「不在一瞬」今井聖〉

・懐中時計の蓋が冬日に跳ねて開(あ)く…景が見えます。

〈作品12句 「草萌」大木孝子〉

・干鱈裂く舌禍ちりちりよみがへる
…オノマトペ「ちりちり」が効果的です。干鱈の質感さえ感じさせます。

〈作品12句 「寒の雨」和田耕三郎〉

・満天の星を数へて狸汁
…冬山と山小屋・山荘の景が見えてきます。「数へて」が効果的です。ここを「眺めて」とすると臨場感が一気に損なわれます。

〈作品12句 「ボルサリーノ帽」武藤紀子〉

・冬日流れてかたまつて白色レグホン
…上七と中七・下六の句またがり。冬日(冬の夕暮)も白色レグホンも「純白」ではなく少し汚れた「乳色」をしています。
「夕日なきゆふぐれ白し落葉焚 小川軽舟」を想起させます。

〈作品12句 「庭にふる雨」鈴木章和〉

・ほつほつとこれからのこと蕗の薹
…取り合わせですが、オノマトペ「ほつほつと」が「これからのこと」にも「蕗の薹」にもかかっています。「蕗の薹」という難しい季語をうまく料理しています。

〈作品12句 「祈り」浦川聡子〉

・しろがねは寒三日月の縁あたり
…冬の月の色はしろがね。特に寒三日月ではそれを顕著に感じます。
それでは(秋の)月はどうでしょうか。「見つめをる月より何かこぼれけり 富安風生」
(秋の)月の色は黄金(くがね)であり、縁からこぼれるものは金箔とも言えます。

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