【角川「俳句」4月号より⑥】
〈第36回俳人協会新人賞 受賞作 『雪華』30句抄 甲斐由起子〉
① 流し雛ひと揺らぎして水底へ
② うつしみの色さしきたり羽化の蟬
③ 翅も目も一山も濡れ蟬生まる
④ 一湾を流れてきたり花火の香
⑤ 病み抜いて垢も浮き来ぬ柚子湯かな
…①の作り方には好感を持ちます。④は新しい感覚と思います。
〈同 受賞第一作『耳澄ます』〉
・遅れ来る人の眩しさつばくらめ
…送れて来た人と燕の取り合わせですが、巧いですね。言われてみれば確かにそうです。
〈第36回俳人協会新人賞 受賞作 『眼光』30句抄 下坂速穂〉
① 寒紅やくやし涙のまつすぐに
② 燕の子濡れずに雨を見てゐたる
③ くさはらを歩めば濡れて魂祭
④ 灯さずにゐる夕暮や衣被
⑤ 約束の夜風に集ひ今年酒
…①は「まつすぐに」に青春性を感じます。④は倦怠感と共に懐かしさを感じます。
〈同 受賞第一作『掌編』〉
・古草や湯島へゆくに上り坂…明快にして深し、という感じがします。
〈第36回俳人協会新人賞 受賞作 『熊野曼荼羅』30句抄 堀本裕樹〉
① 葉擦れみな言の葉となる五月かな
② 月光を身籠もつてゐる海月かな
③ 行き倒れし者蟋蟀に飛び乗らる
④ 椎の葉に夕日うつくし新豆腐
⑤ 夜咄や暗がりに斧立て掛けて
…④は「椎の葉」と「新豆腐」の色彩の対比が良いと思います。⑤は「夜咄」のルーツが感じられます。
〈同 受賞第一作『癋見の目玉』〉
・鳥雲に入るや巨石に海の風…天上の風と地上(海原)の風の違いを感じます。
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