2013年3月26日火曜日

角川「俳句4」月号より②

〈特別作品21句〉
『失蝶記』斎籐愼爾

・昏かりき芒てふ字のなかの亡…「芒」という字には「亡」があるという内容です。この句も含め、全体に理屈っぽい印象がしました。「てふ」という言葉も好きではありません。一般人が解すことが出来ないからです。

・寝釈迦いま父母と山河を隔てたる…涅槃会です。具体的にどう隔てているのか景が明確ではない感じはしますが、調べは良いと思いました。

〈特別作品21句〉
『雪解』石田郷子

・耳聡き人の振向く枯野かな…取り合わせの変型です。荒涼にして夜の海のごとき枯野の景とその静けさが伝わってきます。巧いですね。

・御寺に口噤むべし梅の花…禅寺の梅園でしょうか。早朝の冴えきったた空気にほんのり漂う梅が香や、梅の高貴なまでの白さを感じます。時折、静謐さを破る、僧坊からの水垢離の音すら聞こえてきそうです。「梅」の本情である「凛としたたたずまい」を見事に捉えています。久留米市の梅林寺(臨済宗)をすぐに思い出しました。真似の出来ない巧さです。アマチュアとプロの歴然たる差を感じます。

・春風やぜんざいのあと塩こんぶ…これも「春風」の本情をよく捉えています。作りもシンプルで好感が持てます。

〈暗唱句 ⑱〉

天文
〈花曇-晩春〉
・ゆで玉子むけばかがやく花曇            中村汀女    (☆)
・をととひもきのふも壬生の花曇           古館曹人
・みづうみに粘りありけり養花天           仲 寒蟬

生活・行事
〈春愁-三春〉
・髪おほければ春愁の深きかな            三橋鷹女    (☆)
・春愁のまなこざぶざぶ洗ひけり           大木あまり
・新幹線待つ春愁のカツカレー            吉田汀史

これで重要季語96、例句269です。

春の重要季語は終りかと思いましたが、『日本の歳時記』(小学館)を見ると、また重要季語の「洩れ」がありました。

天文;霾
生活・行事;草餅、桜餅、お水取り
動物;蚕
植物;ものの芽、芹

折角ですから、ここも片付けてしまいましょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿