初春の寒さを表現する時候の季語には、「春浅し」「冴返る」「余寒」「春寒」「遅春」などがあります。
しかしこれらの時候の季語の使い分けは容易ではありません。
初春に限ったことではなく、季節の移行する節季の時候の季語は扱いが難しいものです。
よく用いられるのは「冴返る」、その次に「春浅し」「余寒」「春寒(料峭)」かと思います。
「冴返る」は取り合わせの句で「即き過ぎ」になりやすい季語の一つです。注意して用いて下さい。
・某の乱行に似て冴返る 相生垣瓜人
・冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨
・白杖の倒れしひびき冴え返る 福田甲子雄
・冴返る袋に透けて買ひしもの 小澤 實
「余寒」でよく目にするのは「余寒なほ」という表現です。
立春を過ぎても晩冬の「寒」が残る、余るというのが季語の本意であり本情です。
立秋後の暑さを「残暑」と呼ぶのに対応しています。
ですから「余寒なほ」という表現は適切とは言えません。
・鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子
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