2013年2月9日土曜日

立春を過ぎて、いわゆるドカ雪が降ることも少なくありません。
また雨が急に霙になったり、逆に雪が霙になることもあります(「春の霙」)。
これらは移ろいやすい早春の天候の特長とも言えます。

歳時記によっては「牡丹雪」を「淡雪」の中にいれているものもありますが、ここでは一応「春の雪」の中に入れておきます。

「春の雪」は「雪」(冬)に比べ、季節の違いだけでなく「語感」の違いがあります。
「春の雪」の方があたたかく、やわらかく、もろく、明るい。

個人的な意見ですが、「雪」や「春の雪」で取り合わせの句を作る場合、「痛ましい・残酷」等のネガティブな内容は、「雪」よりも「春の雪」に合わせやすいと感じます。
それは「雪」自体に多少ネガティブな要素が含まれているからだと思います。

取り合わせでは異なるものどうしで構成されますから、ネガティブ(内容)+ネガティブ(雪)より、ネガティブ+ポジティブ(春の雪)の方がより効果が増し、さらにはネガティブな内容に対しある種の「救い」を感じるからではないかと思います。

実作上、今は暦の上では春だからという理由だけで「春の雪」を用いるのではなく、文芸上より適切な季語を選択する方が良いかと思います。

「客観写生」という概念を軽視する訳ではありませんが、それもケース・バイ・ケースかと思います。

文芸上においては「より相応しい」方(季語)を選ぶ、また藤田湘子氏の著書にもあるように、吟行においては必ずしもその場で見られなくともあって然るべきものは詠んで構わないという柔軟な姿勢の方が大事かと思われます。

【春の雪】
・春の雪青菜をゆでてゐたる間も         細見綾子
牡丹雪その夜の妻のにほふかな         石田波郷
・白鳥の死やその上に春の雪           山崎ひさを
・馥郁と内蔵はあり春の雪            高野ムツオ
・牡丹雪水に映りて水に入る           堀内 薫

【淡雪】
・淡ゆきや粋筋きえてもとの道          千
・あはゆきのつもるつもりや砂の上        久保田万太郎
・淡雪嘗めて貨車の仔牛の旅つづく        加藤楸邨

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