2013年4月30日火曜日

【G.W.後半・旅吟】

G.W.も後半に入ります。

連休直前に福岡に行きましたが、なんと人の多いこと。「きゃりーぱみゅぱみゅ」(詳しくは知りません)を模したギャル?も歩いています。

福岡のApple Sroreも人だかりで、PC類の熱以外にも人により、店舗の中は熱を帯びていました。

相も変わらず人酔いしました。

福岡もよく遊びに行き、実際居住していたこともありますが、もはや市街地には住めません。

適度に都会で、適度に田舎、そして住みやすさ…人間の欲は尽きることがありません。

後半生は欧州に居住する計画を立てていましたが、現状では無理です。
せいぜい旅行程度となります。それでも一度には行けません。
また私は個人旅行しかしません。

海外で今一番行きたいところはロシアです。
モスクワ(直行便の飛行機)-「エルミタージュ美術館」(サンクトペテルブルク)-「シベリア鉄道」-ウラジオストックというスケジュールです。
これでも最低2週間はかかりそうです。
何とかやり繰りしてみます。

旅吟について…

海外詠でも国内の旅吟でも、その地でしばらく暮らし、風土や気質をよく感じることが前提条件かと思います。
そこに住む人のみならずその土地に対し失礼となります。

〈暗唱句〉

時候〈秋近し-晩夏〉

・山水のつまづく音や秋隣             石田勝彦    (☆)

天文〈夕立-三夏〉

・祖母山も傾山も夕立かな             山口青邨
・夕立のしぶき淡海をかくしけり          鷲谷七菜子
・さつきから夕立の端にゐるらしき         飯島晴子    (☆)
・すみずみを叩きて湖の驟雨かな          綾部仁喜
・漁るや白雨さなかもその後も           岩井英雅

生活・行事〈梅干-晩夏〉
(なし)

動物〈葭切-三夏〉

・夕潮の満ちわたりけり葭すゞめ          日野草城    (☆)
・月やさし葭切葭に寝しづまり           松本たかし
・田の泥の額に乾く行々子             矢島渚男

植物〈夏木立-三夏〉

・なつ木立いとゞ木曾路の空せまし         蝶 夢
・又雨の太き糸見え夏木立             星野立子    (☆)
・磨かれし馬匂ふなり夏木立            福田甲子雄

これで重要季語45、例句126です。

2013年4月29日月曜日

角川『俳句』5月号より⑤(終)

G.W.前半終了です。デスク・ワーク?も含め、あれこれ忙しいまま過ぎてしまいました。TVに映し出されるUターン・ラッシュはいつ見ても凄まじいものがあります。
G.W.明けの週末に帰郷?する予定です。

〈クローズ・アップ 井上康明句集『峽谷』〉

-新作5句『卯月』-
(なし)

-『峽谷』自選20句抄-

・その奧に裏富士の紺夏霞…裏富士は赤富士(夏)が有名ですが、表・裏に関係のない「青富士」(夏)という言葉もあります。ここでは「夏霧」よりも「夏霞」が相応しく、裏富士の景にリアリティー与えています。作者の心情も伝わってきそうです。

〈クローズ・アップ 中田水光『太白』〉

-新作5句『星鴉』-
(なし) -『太白』自選20句抄-

・春雷を好みて人に従ひぬ…春雷は空でゴロゴロと音を立てますが、「雷」(夏)のような激しさはありません。人(仕事の上司や結社の主宰など)から激雷のような「叱り」を受けるのは困るが、さりとて緊張感を維持するため自分を見てくれる人の存在は欲しく、それにはおもねるということでしょうか。

〈新鋭俳人20句競詠 『春の風邪』涼野海音〉

塩田の跡を風吹く涅槃かな…沙羅双樹の下で釈迦は涅槃に入りましたが、「風」はそこからのものでしょうか。「塩田の跡」は日本人の歴史を象徴するかのようです。

・空き瓶の中に砂粒春の暮…空き缶ではなく「空き瓶」であるため、外から中が見えます。「砂粒」からは波打ち際から離れた砂浜ではないでしょうか。悪い意味ではなく、計算されているような気がします。

〈新鋭俳人20句競詠 『明るき方』生駒大祐〉

 春雨の暗きが夜へ押し移る…暗さを表現する雨として、「梅雨」なら分かりますが「春雨」は妥当でしょうか。「押し移る」はやや強引な感じがします。「移りけり」とするか、「暗きのままに夜に移る」の方が平明かと思います。

・若竹に雨の香の立ち上りけり…上五は「雨の香の」の方が良いかと思います。中七・下五はやや調べが良くない感じがします。例えば「雨の香の立ち上るなり今年竹」とすると、調べは整う気がします。

〈俳人スポットライト『永久歯』すずき巴里〉

・箱根駅伝選手でありし草の笛…句中の切れが分かりにくいのですが、中七の末「し」に切れが入ります。上五・中七の内容は作者本人のことでしょう。今は草笛を吹いていますが、当時の歓声を思い出していると思います。

〈俳人スポットライト『春寒 逍遙 即吟』岩波浩吉郎〉
(なし)

〈俳人スポットライト『沖縄』蛭川晶代〉

・頭に魚を乗せ売る女島の春…南国情緒に溢れていますが、一句としては場所が判然としません。春かどうかも分かりません。直接頭に魚を乗せている訳ではなく、笊のようなものに入れているでしょう。そこは省略できないところと思います。逆に「乗せ売る」は省略できるところだと思います。

・青空へ凧の吸はるる沖縄園…「凧の吸はるる」は面白い表現と思います。上五が勿体ない気がします。例えば「南国へ続く空なりいかのぼり」とすると、沖縄であることが推察されます。

〈俳人スポットライト『五浦』岸本尚子〉

・鮟鱇の血一滴もなく切られ…鮟鱇の「吊るし切り」でしょうか。「血一滴」は「ちひとしずく」と読むのでしょうが、やはり無理があります。例えば「手際よく鮟鱇裂かれ血とてなし血もあらず)」とすると、調べも良くなり「吊るし切り」の景も見えてくるかと思います。

〈暗唱句〉

時候〈涼し-三夏〉

・大の字に寝て涼しさよ淋しさよ          一 茶
・仁丹の銀こぼれつぐ涼しさよ           山口青邨     (☆)
・どの子にも涼しく風の吹く日かな         飯田龍太
・反物を投げ展げたる涼しさよ           遠藤千鶴羽
・思ひきり旅荷小さくして涼し           今成志津

天文〈五月雨-仲夏〉

・五月雨の降り残してや光堂            芭 蕉      (☆)
・五月雨を集めて早し最上川            芭 蕉
・さみだれや大河を前に家二軒           蕪 村
・さみだれや船路にちかき遊女町          几 董
・さみだれのあまだればかり浮御堂         阿波野青畝

生活・行事〈冷奴-三夏〉

・兄弟の夕餉短し冷奴               加藤楸邨     (☆)

動物〈老鶯-三夏〉

・乱鶯のこゑ谷に満つ雨の日も           飯田蛇笏     (☆)
・老鶯や都府楼礎石歩測して            肥田埜勝美

植物〈青梅-仲夏〉

・青梅のしり美しくそろひけり           室生犀星     (☆)

これで重要季語41、例句114です。

2013年4月28日日曜日

角川『俳句』5月号より④

G.W.真っ只中です。私は机に向かい合っている時間が増えています。デスクワークというほど大したものではありません。iPadを調整しています。


G.W.を挟むためか、拙句集の配送が遅れているようです。AmazonのHPには、「5/8より発売」とあります。寄贈先の方々にはご迷惑をおかけしています。申し訳御座いません。


〈日本の俳人100 ② 文挾夫佐恵句集『白駒』〉


-新作7句『寿』-


・紅よりも白匂ふらむ夜の梅…傍題に「好文木」「匂草」とあるように、梅の特長の一つはその香です。紅梅の若干の咲き遅れや、色彩による影響などを差し引いても、「梅が香」はやはり白梅です。

和歌の頃より夜の闇に漂う清々としたその香は詠まれています。
〈春の夜のやみはあやなし梅の花色こそみえねかやはかくるゝ 凡河内躬恒〉

-
『白駒』自選二十句抄-

・六道の辻に咲く夜のからすうり…烏瓜の花は、煙るような糸状の裂けた白い花弁を夕方から夜に開き、花粉を媒介するのは蛾です。花自体の形や蛾の止まっている姿は、幽玄でもあり不気味ともいえます。「六道の辻」とは「死角」を指すかと思います。


・艦といふ大きな棺(ひつぎ)沖縄忌…戦艦大和を含め、多くの軍艦が沖縄沖で撃沈され、そのまま多くの人間の棺となりました。何とか戦争を生き抜いた人も、今でも巨大な棺に心痛しています。

「大きな」は口語であり、出来れば文語に統一して欲しいところです。

〈今日の俳人 作品7句 『雪は雨に』吉田成子

・日の当るところ床鳴る雪の寺…床の木の質感が伝わってきます。


〈今日の俳人 作品7句 『負ふ荷』佐藤喜仙

・狐火を語る古老の影薄し…狐火の正体は諸説あるもののまだ不明確です。古老は半分あの世に身をあずけており、のちにその狐火となるやも知れないということでしょう。


〈今日の俳人 作品7句 『涅槃図』岡崎桂子

・袂より水入り来し流し雛…意味は分かります。中七の「水入り来たし」は疑問です。「水の入り来て」「水入り来たり」などの方が調べも文法的にも良い気がします。


〈今日の俳人 作品7句 『花の奈落』松永浮堂


・鐘の音はかがやきて来る五月来る…二句一章の一物仕立てという形式ながら、「鐘の音」「かがやき」は、「五月来る(ぬ)」の類想感がします。

〈今日の俳人 作品7句 『羽化登仙』天野小石

・潮まねき真砂のひかり零しけり…掲げた大きな鋏脚(はさみ)より洩れ来る光が感じられます。

〈今日の俳人 作品7句 『母の杖』掛井広通

・耳袋話大きくなつてをり…耳袋により、集合器である耳介が「ダンボの耳」のように巨大化したようにに思え、普段より噂話、なかんずく自分に関係する話がよく聞こえるようだという、感覚(錯覚)を故意に表現しています。

〈暗唱句〉

時候〈暑し-三夏〉


・百姓の生きてはたらく暑さかな          蕪 村
・蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな          芥川龍之介
・世にも暑にも寡黙をもって抗しけり        安住 敦
・鶏の目の少しずれたる暑さかな          小笠原和男   (☆)
・マヨネーズおろおろ出づる暑さかな        小川軽舟

天文〈梅雨-仲夏〉

・ふところに乳房ある憂さ梅雨長き         桂 信子    (☆)
・荒梅雨の尸(かばね)焼く音憚らず        飯島晴子
・舞ひもどるとうしみとんぼ梅雨の石        古館曹人    
・膝の荷が卓押す梅雨のラーメン屋         岡本 眸
・麦飯(ばくはん)の湯気の分配梅雨の獄      北 さとり

地理〈滝-三夏〉

・神にませばまこと美(うる)はし那智の滝     高浜虚子
・滝落ちて群青世界とゞろけり           水原秋桜子
・滝の上に水現れて落ちにけり           後藤夜半    (☆)
・滝となる前のしづけさ藤映す           鷲谷七菜子
・滝音となる水と水水と石             後藤比奈夫

生活・行事〈鮓-三夏〉

・鮒鮓や彦根が城に雲かかる            蕪 村     (☆)
・鮎鮨や山を幾重にわが母郷            近藤一鴻

動物〈郭公-三夏〉

・なけば啼(なく)ふたつの山のかんこ鳥      白 雄     (☆)
・湖といふ大きな耳に閑古鳥            鷹羽狩行

植物〈凌霄の花-晩夏〉

・凌霄は供養の灯いろ峡の村            成田千空    (☆)

これで重要季語36、例句100です。『角川俳句大歳時記 夏』(角川書店)の「地理」の重要季語は終りです。

2013年4月27日土曜日

角川『俳句』5月号より ③

昨日はiPad を購入するため、広島と福岡のApple Storeの間を往復しました。

帰ると、どさりと拙句集が…

真夜に外に出ると、朧月かつ春満月です。月が薄衣を纏っているように感じられ、妖艶なる熟女を連想しました。


・長襦袢解けば刺青や月おぼろ            山咲臥竜 『原型』


〈作品12句 『花の齢』鈴木貞雄〉


・初夢は見ざれど姥のゐしけはひ…亡妻を「姥(うば)」と謙譲しているのでしょうか。「初夢」と「けはひ」という組み合わせに意外性を感じます。


・浅葱幕落つれば海や初芝居…初春の歌舞伎ですので、おそらく『俊寛』でしょう。


・涅槃図に生きて紛るるきらら虫…「雲母(きらら)虫」という言葉が有効的です。「紙魚(しみ)」では不浄な感じがします。


〈作品12句 『揚雲雀』浅井陽子〉


・永き日や笊に豆腐の水を切る…季語「日永」はよく活きています。「切る」より「切り」と末尾は流した方が良いかと思います。


・山ざくら生簀の鯉を抱き来る…山桜との相性は良いと思います。ただ下五に据えた方が効果的な印象がします。「生簀」は省略し、「抱き来る」は「抱く」か「来る」かどちらかに絞っても良いかと思います。


・ゆふぐれの雲はなやげる三鬼の忌…西東三鬼が平穏な日々を送れたのは晩年でしょう。それをうまく喩えています。
・ゆふぐれの雲はなやげる三鬼の忌…西東三鬼が平穏な日々を送れたのは晩年でしょう。それをうまく喩えています。

〈作品12句 『一尋ほど』ふけとしこ〉

・鉄瓶の滾るがままに猟期果つ…野性的な匂いを漂わせつつ、うまく詠っています。番小屋の南部鉄の「鉄瓶」、「滾るがまま」、そして「猟期の果てた」複雑な感情等が効果的に作用しています。番小屋には獣や猟師の綯い交ぜになった饐えた臭いが感じられ、背景には剝き出しの土と残る雪が見えてきます。


・石橋の一尋ほどや薄紅葉…庭園の池に渡された石橋でしょうか。「一尋ほど」とは両手を広げた幅ですので、現実的にはやや広い感じはしますが。薄紅葉との相性が良いと思います。


・ゆく春や虎魚が結ぶ口に泡…言われてみれば口から泡を吹いている魚類は、歯並びの悪い虎魚や鮟鱇ぐらいしか思いつきません。鮟鱇は口を結んでおらず、虎魚は程良く口を結びます。「虎魚の口に泡」は一つの発見ですが、作者は既にそれを知っています。「ゆく春」と取り合わせたことで、作品として結実しています。


〈作品12句 『十一日』渡辺誠一郎〉


・春の夜の肉をたがえてしまいけり…死者の肉塊が入り交じり、ある死者の近くの手足は他の死者のものであったということでしょう。


・長き橋春を怨みと哭くために…「春を怨み」は春愁の傍題です。「怨み」「哭く」など感情が先走りした印象を受けます。


・この国に生きて如月耳鳴りす…心的外傷後の耳鳴でしょうか。


どれも3.11に凭れていますが、本来俳句は個々に独立性を持つべきと思います。

こうした内容を、そもそも俳句形式で詠うこと自体に疑問を感じます。
死者への冒瀆の上に立つ、生者のエゴと取られても仕方ありません。

〈作品12句 『春は一縷の』今井 豊〉

・かぎろひや片方うせしこども靴…う〜ん、類想感あるものの「春泥に片つぽのみの子供靴」などの方が無難かと思います。


・ひたすらにいのちを生きて桜浴ぶ…「いのち」は私のものではなく、神仏から与えられたものと捉えています。「桜浴ぶ」は、「飛花」「落花」ではなく、「桜の花」でしょう。ただ変化に乏しく、「堅実な日本人として生きました」という報告に近い内容になっている感じがします。


・突発性難聴春の水めぐる…内容を考えれば「春の水」より「雪解水」や
「氷」かも知れません。「めぐる」は不確かな印象を受けます。

〈暗唱句〉


時候〈短夜-三夏〉


・短夜や空とわかるる海の色             几 董

・短夜や胃の腑に飯の残りたる            正岡子規     (☆)
・短夜や盗みて写す書三巻              大須賀乙字
・短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまをか) 竹下しづの女
・短夜や大手のままの将棋盤             佐々木有風

天文〈風薫る-三夏〉

・叢に山繭白し風薫る                室生犀星     (☆)
・押さへてもふくらむ封書風薫る           八染藍子

地理〈清水-三夏〉

・絶壁に眉つけてのむ清水かな            松根東洋城    (☆)

生活・行事〈粽-初夏〉

・結び目のまだ濡れてゐる粽かな           山碕ひさを
・粽解く葭の葉れの音させて             長谷川 櫂    (☆)

生活・行事〈粽-初夏〉

・結び目のまだ濡れてゐる粽かな           山碕ひさを
・粽解く葭の葉ずれの音させて            長谷川 櫂    (☆)

動物〈時鳥-三夏〉

・ほととぎす大竹藪を漏る月夜            芭 蕉
・谺して山ほととぎすほしいまゝ           杉田久女     (☆)
・ほととぎす痛恨つねに頭上より           山口草堂
・征くのみの戦のありし時鳥             伊藤通明
・ほととぎすいくつもの山下に見て          茨木和生

植物〈百日紅-仲夏〉


・咲き満ちて天の簪百日紅              安部みどり女

・葬終へし箒の音や百日紅              鷲谷七菜子    (☆)
・不浄門すれすれに白さるすべり           宇多喜代子

これで重要季語30、例句80です。

2013年4月26日金曜日

【句集『原型』上梓 角川『俳句』5月号より ②

【句集『原型』上梓

句集『原型』(ふらんす堂 1.800円+税)を上梓致しました。
各都道府県立の図書館をはじめ、全国に160冊を寄贈しています。

電子書籍(300円+税)も、間もなくふらんす堂のホームページより購入いただけます。

御一読下されば幸いです。

角川『俳句』5月号より ②

〈作品 16句 女系 伊丹三樹彦〉

・建国日 風吹き通る埴輪の目…埴輪の目の穴に通う風(風化した風やまだ風化していない風)を通して、世の変遷(特に戦や戦争)に対するアイロニーが感じられます。

・三姉妹の英語日本語 春の声…三人目の姉妹は言語ではなく、言語以前である「(小鳥の)鳴き声」にも近い、高く明るい声色かも知れません。

・社家町に土橋石橋草萌える…景に長閑さを感じさせます。

16句中、中8が4句あり、調べ(音楽性)に抵抗感を禁じ得ませんでした。

〈作品 16句 夢見月 上田日差子〉

・みほとけに木の香水の香あたたかし…木仏でしょうか。

コメントは以上です。

作品 8句 初夏の街 小川濤美子

・おだやかな舟往来や初夏来る…「初夏来る」は不自然であり、「夏来る」または「初夏迎ふ」かと思います。「おだやかな」のいう叙法は、形容動詞「おだやかなる」か、その語幹の「おだやか」が良いかと思います。

作品 8句 爛漫 山下美典

・地虫出て五風十雨にされさるる…う〜ん、悩みます。「地虫出づ五風十雨にまぎれつつ」とすれば少しは分かる気がします。

・命芽の他は大胆剪定す…「大胆剪定す」の措辞にはやや雑な印象がします。そもそも「剪定」という季語の説明に終始している感じがします。

・つくしんぼ胞子撒かむと背伸びする…上五を下五へ、下五を中七に入れ「背伸びして風に胞子をつくしんぼ」とすれば見やすくなるかと思います。

作品 8句 春を読む 深谷雄大

・はらからのみな世を終へし雪涅槃…まず「前書き」は不要です。「はらからの」の「の」は「は」、「世を終へし」は、「生終へし」「世(地)をはなれ」「魂となり」等でしょうか。「雪涅槃」より普通に「涅槃雪」の方が良いかと思います。

作品 8句 恋猫 佐久間慧子

コメントはありません

作品 8句 ゆらゆら 德田千鶴子

・待つことを愉しむ齢梅ふふむ…類想感はありますが、まとまりがあります。

・花粉来て春のくしゃみの容赦なし…上五・中七は「花粉症」の説明となっています。

・さいたづま言わねばならぬ苦きこと…さいたづま(虎杖)の選択は良いと思いますが、中七・下五が冗長と感じます。

〈暗唱句〉

時候〈水無月-晩夏〉

・みなづきの酢の香ながるゝ厨かな         飴山 實    (☆)

・水無月やこぼれて青き山の蝶           足立文女

天文〈青嵐-三夏〉

・岡の上に馬ひかへたり青嵐            正岡子規    (☆)

・後手に結ぶ角帯青嵐               松村蒼石
・回生の一手は桂馬青嵐              徳嵩芳夫

地理〈泉-三夏〉

・泉ありいづれの堂も遠からず           森田 峠
・ゆるやかに光琳模様泉より            宮津昭彦    (☆)


生活・行事〈浴衣-三夏〉

・湧く雲の方へ浴衣のまま歩く           廣瀬直人
・花笠を踊るも見るも浴衣がけ           長谷川耿子   (☆)

動物〈蛇-三夏〉

・水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首             阿波野青畝
・全長のさだまりて蛇すすむなり          山口誓子
・畦草に乗るの蛇(くちなは)の重さかな      飯島晴子
・水銀の流るるごとし川の蛇            大木あまり
・青大将実梅を分けてゆきにけり          岸本尚毅    (☆)

植物〈紫陽花-仲夏〉

・紫陽花や白よりいでし浅みどり          渡辺水巴
・紫陽花剪るなほ美(ほ)しきものあらば剪る    津田清子
・兄亡くて夕刊が来る濃紫陽花           正木ゆう子   (☆)

これで重要季語24、例句60です。

2013年4月25日木曜日

【角川『俳句』5月号より ①】

〈特別作品 50句 『菫濃く』深見けん二〉

・日輪のけむらしてゐる欅の芽

・鶯のあとのしづけさ虚子墓前

全体に一物仕立てが多く、かつ「報告」に終わっている印象を受けました。

その他、気になった句を挙げます。

・寒林のかくまで晴れし枝の先…「晴れし」は言い過ぎのような気がします。
・水洟を垂らす祖父母ぞめでたき日…「ぞ」「めでたき日」等気になります。
・海を見て荒れ地に立てり春遠く…時系列に重要性を感じません。
・菫濃く下安松(しもやすまつ)に住み旧りし…上五と下五は順序が逆かと思います。
・老の身の少しあからみ菖蒲風呂…「少し」は出来れば避けたい言葉と感じます。

〈特別作品 21句 『六騎』伊藤通明〉

・蟻地獄風のとどかぬところまで…さすが巧手です。

・鐘崎の海女も絶えたり燕子花…「白あやめ」でも良いかと思いました。

・老僧を追い廻しゐる羽抜鶏…似た者同士の追い廻しを連想させ、滑稽です。

・火の国の噴煙とどく冷し瓜…「とどく」がやや気になりました。

・引退の海士なり烏賊を干してをり…何故「海女」ではないのでしょうか?「海士」を「かいし」ではなく「あま」と読むならば、意味も異なります。

・土用波三角波となりて寄す…三角波は岩礁などの、海底の地形が安定している海辺で生じます。この句もおそらく鐘崎か玄界灘に面した岩場でしょう。

〈特別作品 21句 『然れども』山下知津子〉

・真昼間の淵の暗さの薮椿…やや類想感はしますが、「昼真昼」が効いています。

・家猫もひもじきころやヒヤシンス…野良猫の危機的な飢餓感とは全く異なる家猫の空腹感と、ヒヤシンス(おそらく紫色)の軽い冷感に接点を感じます。絶妙の距離感です。

・藤房をくぐり女の老いにけり…下五を「華やげり」とすれば陳腐となります。藤房が顔や払う手に当たり、女としてのエキスを分け与えるかのようです。

・いのち食うてつなぐいのちや暮の春…季語の選択が秀逸です。

〈暗唱句〉

時候〈麦の秋-初夏〉

・麦秋や書架にあまりし文庫本           安住 敦
・村の子のお使ひ一里麦の秋            鷹羽狩行
・跳ね橋の戻るを待ちぬ麦の秋           戸垣東人    (☆)
・アトリエに未完の裸婦や麦の秋          原田かほる
・麦秋や工都へ跨ぐ鉄の橋             後藤春翠

天文〈南風-三〉

・日もすがら日輪くらし大南風           高浜虚子    (☆)
・南風や洗ひさらしの岩の列            杉山岳陽
・南風吹くカレーライスに海と陸          櫂 未知子

地理〈青田-晩夏〉
(なし)

生活・行事〈羅-晩夏〉

・乳房(ちちぶさ)はおもたからずやうすごろも   富沢赤黄男
・羅をゆるやかに着て崩れざる           松本たかし   (☆)

動物〈河鹿-三夏〉

・河鹿鳴く夜の吊橋を人きたる           水原秋桜子
・河鹿鳴く中に瀬音はゆくばかり          皆吉爽雨    (☆) 
・遠河鹿夢の切れ目をつなぎつつ          伊丹三樹彦 

植物〈牡丹-初夏〉

・ぼうたんと豊かに申す牡丹かな          太 祇
・牡丹散つてうちかさなりぬ二三片         蕪 村
・牡丹百二百三百門一つ              阿波野青畝 
・牡丹(ぼうたん)や富むといふこと美しく     遠藤梧逸    (☆)
・ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに        森 澄雄

これで重要季語18、例句46です。

2013年4月24日水曜日

【大原美術館】

小旅行を兼ね、倉敷の大原美術館に行きました。

キリコヘクトールとアンドロマケの別れ
(ポストカードを額装)
海外の美術館を巡ると、良質ともに日本の美術館の貧弱さを痛感し、それ以来美術館に行かなくなっていました。

『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)契機ですが、確かに日本の美術館の中ではレベルが高いと思いました。

エル・グレコの作品は日本では国立西洋美術館(東京)と大原美術館が一点づつしかありません。

その他、ゴーギャン『かぐわしき大地』(1892年)、パブロ・ピカソ『鳥籠』(1925)『頭蓋骨のある静物』(1942年)、ジョルジュ・デ・キリコ『ヘクトールとアンドロマケの別れ(1918年)アメデオ・クレメンテ・モディリアーニ『ジャンヌ・エビュテルヌの肖像』(1918年)などに興味を持ちました。

逆にモネ『睡蓮』(1906年頃)、ルノワールなど、いわゆる日本人が好みそうな作品にはあまり興味は湧きませんでした。

〈暗唱句〉

時候〈立夏-初夏〉

・毒消し飲むやわが誌多産の夏来る         中村草田男
・おそるべき君等の乳房夏来る           西東三鬼      (☆)

天文〈夏の月-三夏〉

・蛸壺やはかなき夢を夏の月            芭 蕉       (☆)
・市中は物のにおひや夏の月            凡 兆

地理〈夏野-三夏〉

・頭の中で白い夏野となつてゐる          高屋窓秋
・濡紙に真鯉つつみて青野ゆく           福田甲子雄     (☆)

生活・行事〈更衣-初夏〉

・越後屋に衣さく音や更衣             其 角       (☆)

動物〈蝙蝠-三夏〉

・かはほりやわがふところに人の遺書        加藤かけい     
・室生寺にかくれ道あり蚊喰鳥           山本洋子
・蝙蝠の黒繻子の身を折りたたむ          正木ゆう子     (☆)

植物〈薔薇-初夏〉

・薔薇園(そうびえん)一夫多妻の場をおもふ    飯田蛇笏
・手の薔薇に蜂来れば我の如し           中村草田男     (☆)
・そこはかと薔薇の溜息らしきもの         後藤夜半
・薔薇に付け還暦の鼻うごめかす          西東三鬼
・黒鳥はいづこの王子薔薇匂ふ           堀口星眠

これで12季語、例句28です。