G.W.真っ只中です。私は机に向かい合っている時間が増えています。デスクワークというほど大したものではありません。iPadを調整しています。
G.W.を挟むためか、拙句集の配送が遅れているようです。AmazonのHPには、「5/8より発売」とあります。寄贈先の方々にはご迷惑をおかけしています。申し訳御座いません。
〈日本の俳人100 ② 文挾夫佐恵句集『白駒』〉
-新作7句『寿』-
・紅よりも白匂ふらむ夜の梅…傍題に「好文木」「匂草」とあるように、梅の特長の一つはその香です。紅梅の若干の咲き遅れや、色彩による影響などを差し引いても、「梅が香」はやはり白梅です。
和歌の頃より夜の闇に漂う清々としたその香は詠まれています。
〈春の夜のやみはあやなし梅の花色こそみえねかやはかくるゝ 凡河内躬恒〉
-『白駒』自選二十句抄-
・六道の辻に咲く夜のからすうり…烏瓜の花は、煙るような糸状の裂けた白い花弁を夕方から夜に開き、花粉を媒介するのは蛾です。花自体の形や蛾の止まっている姿は、幽玄でもあり不気味ともいえます。「六道の辻」とは「死角」を指すかと思います。
・艦といふ大きな棺(ひつぎ)沖縄忌…戦艦大和を含め、多くの軍艦が沖縄沖で撃沈され、そのまま多くの人間の棺となりました。何とか戦争を生き抜いた人も、今でも巨大な棺に心痛しています。
「大きな」は口語であり、出来れば文語に統一して欲しいところです。
〈今日の俳人 作品7句 『雪は雨に』吉田成子〉
・日の当るところ床鳴る雪の寺…床の木の質感が伝わってきます。
〈今日の俳人 作品7句 『負ふ荷』佐藤喜仙〉
・狐火を語る古老の影薄し…狐火の正体は諸説あるもののまだ不明確です。古老は半分あの世に身をあずけており、のちにその狐火となるやも知れないということでしょう。
〈今日の俳人 作品7句 『涅槃図』岡崎桂子〉
・袂より水入り来し流し雛…意味は分かります。中七の「水入り来たし」は疑問です。「水の入り来て」「水入り来たり」などの方が調べも文法的にも良い気がします。
〈今日の俳人 作品7句 『花の奈落』松永浮堂〉
・鐘の音はかがやきて来る五月来る…二句一章の一物仕立てという形式ながら、「鐘の音」「かがやき」は、「五月来る(ぬ)」の類想感がします。
〈今日の俳人 作品7句 『羽化登仙』天野小石〉
・潮まねき真砂のひかり零しけり…掲げた大きな鋏脚(はさみ)より洩れ来る光が感じられます。
〈今日の俳人 作品7句 『母の杖』掛井広通〉
・耳袋話大きくなつてをり…耳袋により、集合器である耳介が「ダンボの耳」のように巨大化したようにに思え、普段より噂話、なかんずく自分に関係する話がよく聞こえるようだという、感覚(錯覚)を故意に表現しています。
〈暗唱句〉
時候〈暑し-三夏〉
・百姓の生きてはたらく暑さかな 蕪 村
・蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな 芥川龍之介
・世にも暑にも寡黙をもって抗しけり 安住 敦
・鶏の目の少しずれたる暑さかな 小笠原和男 (☆)
・マヨネーズおろおろ出づる暑さかな 小川軽舟
天文〈梅雨-仲夏〉
・ふところに乳房ある憂さ梅雨長き 桂 信子 (☆)
・ふところに乳房ある憂さ梅雨長き 桂 信子 (☆)
・荒梅雨の尸(かばね)焼く音憚らず 飯島晴子
・舞ひもどるとうしみとんぼ梅雨の石 古館曹人
・膝の荷が卓押す梅雨のラーメン屋 岡本 眸
・麦飯(ばくはん)の湯気の分配梅雨の獄 北 さとり
地理〈滝-三夏〉
・神にませばまこと美(うる)はし那智の滝 高浜虚子
・神にませばまこと美(うる)はし那智の滝 高浜虚子
・滝落ちて群青世界とゞろけり 水原秋桜子
・滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半 (☆)
・滝となる前のしづけさ藤映す 鷲谷七菜子
・滝音となる水と水水と石 後藤比奈夫
・鮒鮓や彦根が城に雲かかる 蕪 村 (☆)
・鮎鮨や山を幾重にわが母郷 近藤一鴻
動物〈郭公-三夏〉
・なけば啼(なく)ふたつの山のかんこ鳥 白 雄 (☆)
・なけば啼(なく)ふたつの山のかんこ鳥 白 雄 (☆)
・湖といふ大きな耳に閑古鳥 鷹羽狩行
植物〈凌霄の花-晩夏〉
・凌霄は供養の灯いろ峡の村 成田千空 (☆)
これで重要季語36、例句100です。『角川俳句大歳時記 夏』(角川書店)の「地理」の重要季語は終りです。
・凌霄は供養の灯いろ峡の村 成田千空 (☆)
これで重要季語36、例句100です。『角川俳句大歳時記 夏』(角川書店)の「地理」の重要季語は終りです。
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