2013年4月29日月曜日

角川『俳句』5月号より⑤(終)

G.W.前半終了です。デスク・ワーク?も含め、あれこれ忙しいまま過ぎてしまいました。TVに映し出されるUターン・ラッシュはいつ見ても凄まじいものがあります。
G.W.明けの週末に帰郷?する予定です。

〈クローズ・アップ 井上康明句集『峽谷』〉

-新作5句『卯月』-
(なし)

-『峽谷』自選20句抄-

・その奧に裏富士の紺夏霞…裏富士は赤富士(夏)が有名ですが、表・裏に関係のない「青富士」(夏)という言葉もあります。ここでは「夏霧」よりも「夏霞」が相応しく、裏富士の景にリアリティー与えています。作者の心情も伝わってきそうです。

〈クローズ・アップ 中田水光『太白』〉

-新作5句『星鴉』-
(なし) -『太白』自選20句抄-

・春雷を好みて人に従ひぬ…春雷は空でゴロゴロと音を立てますが、「雷」(夏)のような激しさはありません。人(仕事の上司や結社の主宰など)から激雷のような「叱り」を受けるのは困るが、さりとて緊張感を維持するため自分を見てくれる人の存在は欲しく、それにはおもねるということでしょうか。

〈新鋭俳人20句競詠 『春の風邪』涼野海音〉

塩田の跡を風吹く涅槃かな…沙羅双樹の下で釈迦は涅槃に入りましたが、「風」はそこからのものでしょうか。「塩田の跡」は日本人の歴史を象徴するかのようです。

・空き瓶の中に砂粒春の暮…空き缶ではなく「空き瓶」であるため、外から中が見えます。「砂粒」からは波打ち際から離れた砂浜ではないでしょうか。悪い意味ではなく、計算されているような気がします。

〈新鋭俳人20句競詠 『明るき方』生駒大祐〉

 春雨の暗きが夜へ押し移る…暗さを表現する雨として、「梅雨」なら分かりますが「春雨」は妥当でしょうか。「押し移る」はやや強引な感じがします。「移りけり」とするか、「暗きのままに夜に移る」の方が平明かと思います。

・若竹に雨の香の立ち上りけり…上五は「雨の香の」の方が良いかと思います。中七・下五はやや調べが良くない感じがします。例えば「雨の香の立ち上るなり今年竹」とすると、調べは整う気がします。

〈俳人スポットライト『永久歯』すずき巴里〉

・箱根駅伝選手でありし草の笛…句中の切れが分かりにくいのですが、中七の末「し」に切れが入ります。上五・中七の内容は作者本人のことでしょう。今は草笛を吹いていますが、当時の歓声を思い出していると思います。

〈俳人スポットライト『春寒 逍遙 即吟』岩波浩吉郎〉
(なし)

〈俳人スポットライト『沖縄』蛭川晶代〉

・頭に魚を乗せ売る女島の春…南国情緒に溢れていますが、一句としては場所が判然としません。春かどうかも分かりません。直接頭に魚を乗せている訳ではなく、笊のようなものに入れているでしょう。そこは省略できないところと思います。逆に「乗せ売る」は省略できるところだと思います。

・青空へ凧の吸はるる沖縄園…「凧の吸はるる」は面白い表現と思います。上五が勿体ない気がします。例えば「南国へ続く空なりいかのぼり」とすると、沖縄であることが推察されます。

〈俳人スポットライト『五浦』岸本尚子〉

・鮟鱇の血一滴もなく切られ…鮟鱇の「吊るし切り」でしょうか。「血一滴」は「ちひとしずく」と読むのでしょうが、やはり無理があります。例えば「手際よく鮟鱇裂かれ血とてなし血もあらず)」とすると、調べも良くなり「吊るし切り」の景も見えてくるかと思います。

〈暗唱句〉

時候〈涼し-三夏〉

・大の字に寝て涼しさよ淋しさよ          一 茶
・仁丹の銀こぼれつぐ涼しさよ           山口青邨     (☆)
・どの子にも涼しく風の吹く日かな         飯田龍太
・反物を投げ展げたる涼しさよ           遠藤千鶴羽
・思ひきり旅荷小さくして涼し           今成志津

天文〈五月雨-仲夏〉

・五月雨の降り残してや光堂            芭 蕉      (☆)
・五月雨を集めて早し最上川            芭 蕉
・さみだれや大河を前に家二軒           蕪 村
・さみだれや船路にちかき遊女町          几 董
・さみだれのあまだればかり浮御堂         阿波野青畝

生活・行事〈冷奴-三夏〉

・兄弟の夕餉短し冷奴               加藤楸邨     (☆)

動物〈老鶯-三夏〉

・乱鶯のこゑ谷に満つ雨の日も           飯田蛇笏     (☆)
・老鶯や都府楼礎石歩測して            肥田埜勝美

植物〈青梅-仲夏〉

・青梅のしり美しくそろひけり           室生犀星     (☆)

これで重要季語41、例句114です。

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