2013年4月27日土曜日

角川『俳句』5月号より ③

昨日はiPad を購入するため、広島と福岡のApple Storeの間を往復しました。

帰ると、どさりと拙句集が…

真夜に外に出ると、朧月かつ春満月です。月が薄衣を纏っているように感じられ、妖艶なる熟女を連想しました。


・長襦袢解けば刺青や月おぼろ            山咲臥竜 『原型』


〈作品12句 『花の齢』鈴木貞雄〉


・初夢は見ざれど姥のゐしけはひ…亡妻を「姥(うば)」と謙譲しているのでしょうか。「初夢」と「けはひ」という組み合わせに意外性を感じます。


・浅葱幕落つれば海や初芝居…初春の歌舞伎ですので、おそらく『俊寛』でしょう。


・涅槃図に生きて紛るるきらら虫…「雲母(きらら)虫」という言葉が有効的です。「紙魚(しみ)」では不浄な感じがします。


〈作品12句 『揚雲雀』浅井陽子〉


・永き日や笊に豆腐の水を切る…季語「日永」はよく活きています。「切る」より「切り」と末尾は流した方が良いかと思います。


・山ざくら生簀の鯉を抱き来る…山桜との相性は良いと思います。ただ下五に据えた方が効果的な印象がします。「生簀」は省略し、「抱き来る」は「抱く」か「来る」かどちらかに絞っても良いかと思います。


・ゆふぐれの雲はなやげる三鬼の忌…西東三鬼が平穏な日々を送れたのは晩年でしょう。それをうまく喩えています。
・ゆふぐれの雲はなやげる三鬼の忌…西東三鬼が平穏な日々を送れたのは晩年でしょう。それをうまく喩えています。

〈作品12句 『一尋ほど』ふけとしこ〉

・鉄瓶の滾るがままに猟期果つ…野性的な匂いを漂わせつつ、うまく詠っています。番小屋の南部鉄の「鉄瓶」、「滾るがまま」、そして「猟期の果てた」複雑な感情等が効果的に作用しています。番小屋には獣や猟師の綯い交ぜになった饐えた臭いが感じられ、背景には剝き出しの土と残る雪が見えてきます。


・石橋の一尋ほどや薄紅葉…庭園の池に渡された石橋でしょうか。「一尋ほど」とは両手を広げた幅ですので、現実的にはやや広い感じはしますが。薄紅葉との相性が良いと思います。


・ゆく春や虎魚が結ぶ口に泡…言われてみれば口から泡を吹いている魚類は、歯並びの悪い虎魚や鮟鱇ぐらいしか思いつきません。鮟鱇は口を結んでおらず、虎魚は程良く口を結びます。「虎魚の口に泡」は一つの発見ですが、作者は既にそれを知っています。「ゆく春」と取り合わせたことで、作品として結実しています。


〈作品12句 『十一日』渡辺誠一郎〉


・春の夜の肉をたがえてしまいけり…死者の肉塊が入り交じり、ある死者の近くの手足は他の死者のものであったということでしょう。


・長き橋春を怨みと哭くために…「春を怨み」は春愁の傍題です。「怨み」「哭く」など感情が先走りした印象を受けます。


・この国に生きて如月耳鳴りす…心的外傷後の耳鳴でしょうか。


どれも3.11に凭れていますが、本来俳句は個々に独立性を持つべきと思います。

こうした内容を、そもそも俳句形式で詠うこと自体に疑問を感じます。
死者への冒瀆の上に立つ、生者のエゴと取られても仕方ありません。

〈作品12句 『春は一縷の』今井 豊〉

・かぎろひや片方うせしこども靴…う〜ん、類想感あるものの「春泥に片つぽのみの子供靴」などの方が無難かと思います。


・ひたすらにいのちを生きて桜浴ぶ…「いのち」は私のものではなく、神仏から与えられたものと捉えています。「桜浴ぶ」は、「飛花」「落花」ではなく、「桜の花」でしょう。ただ変化に乏しく、「堅実な日本人として生きました」という報告に近い内容になっている感じがします。


・突発性難聴春の水めぐる…内容を考えれば「春の水」より「雪解水」や
「氷」かも知れません。「めぐる」は不確かな印象を受けます。

〈暗唱句〉


時候〈短夜-三夏〉


・短夜や空とわかるる海の色             几 董

・短夜や胃の腑に飯の残りたる            正岡子規     (☆)
・短夜や盗みて写す書三巻              大須賀乙字
・短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまをか) 竹下しづの女
・短夜や大手のままの将棋盤             佐々木有風

天文〈風薫る-三夏〉

・叢に山繭白し風薫る                室生犀星     (☆)
・押さへてもふくらむ封書風薫る           八染藍子

地理〈清水-三夏〉

・絶壁に眉つけてのむ清水かな            松根東洋城    (☆)

生活・行事〈粽-初夏〉

・結び目のまだ濡れてゐる粽かな           山碕ひさを
・粽解く葭の葉れの音させて             長谷川 櫂    (☆)

生活・行事〈粽-初夏〉

・結び目のまだ濡れてゐる粽かな           山碕ひさを
・粽解く葭の葉ずれの音させて            長谷川 櫂    (☆)

動物〈時鳥-三夏〉

・ほととぎす大竹藪を漏る月夜            芭 蕉
・谺して山ほととぎすほしいまゝ           杉田久女     (☆)
・ほととぎす痛恨つねに頭上より           山口草堂
・征くのみの戦のありし時鳥             伊藤通明
・ほととぎすいくつもの山下に見て          茨木和生

植物〈百日紅-仲夏〉


・咲き満ちて天の簪百日紅              安部みどり女

・葬終へし箒の音や百日紅              鷲谷七菜子    (☆)
・不浄門すれすれに白さるすべり           宇多喜代子

これで重要季語30、例句80です。

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