2013年7月20日土曜日

俳壇8月号より③

〈鎮魂-戦後68年目の記憶『流灯』木村里風子〉
(なし)

〈鎮魂-戦後68年目の記憶『原爆忌』西山常好〉


・聖鐘は湾に解けし長崎忌


…地形を考えると、「原爆忌」より「長崎忌」がいいですね。中七「湾に解けし」が「し」と過去形です。「ほどけて」で良い気がします。


〈鎮魂-戦後68年目の記憶『知覧』榎本好宏〉

(なし)

〈鎮魂-戦後68年目の記憶『虹の骨』野ざらし延男〉

(なし)

〈平成俳人クロニクル・新作10句『神の瀧』長嶺千晶〉


・夏木立法螺の響きを底ひより


…作者と修験道者達との位置関係がよく分かります。


〈若手トップランナー・新作20句『現し世』富田拓也〉


・書架にひそみしいくつもの語句夏の星


…書架にひそんでいる語句と「夏の星」との共通項でしょうか。「夏の星」の本意である「見えにくさ」をうまく使っているように思います。


・一晩に生(あ)れつぐ文字や灯取虫


…この取り合わせには驚きました。

夜中に多産した詩も、翌朝にはつまらないものと感じることは少なくありません。
一方、灯取虫は次々と灯の中に飛び込み死を迎えます。ここが共通項かと思います。
それらはもひそかにして、夏の夜の夢の儚さを象徴しているかのようです。

〈本阿弥書店ブックレビュー『邯鄲の宙』・新作『麦笛』矢島惠〉

(なし)

〈俳壇賞作家のいま 作品10句『浮人形』柴田佐知子〉


・足洗ふ水を残して水を打つ


打水をする場所は石ではなく土と分かります。土や泥水の跳ね返りの付いた足を最後に洗っています。リアリティーを感じます。

・浮人形飽かれて水に遠くあり


…池の中ほどなど容易には届かないところに廃棄された「浮人形」を認めています。

浮かび上がってきた水死体すら連想させ、「もの」の残酷な結末と共に、哀れや儚さを感じます。
もしかするとその「浮人形」は、遠い昔に作者が捨てたものかも知れず、人間の漠として暗鬱たる不安や後ろめたも感じられます。


〈暗唱句〉

生活〈七夕-初秋〉

・七夕や秋を定むる夜のはじめ            芭 蕉     (☆)
・七夕や髪濡れしまま人に逢ふ            橋本多佳子
・七夕の水に沈めし蕪(かぶら)かな         斎籐夏風
・七夕や若く愚かに嗅ぎあへる            髙山れをな

動物〈渡り鳥-仲・晩秋〉

・木曾川の今こそ光れ渡り鳥             高浜虚子    (☆)
・鳥わたるこきこきこきと罐切れば          秋元不死男
・渡り鳥みるみるわれの小さくなり          上田五千石
・鳥渡る北を忘れし古磁石              鍵和田秞子
・はらわたの熱きを侍み鳥渡る            宮坂静生

植物〈木槿-初秋〉

・木槿咲く籬の上の南部富士             山口青邨
・老後とは死ぬまでの日々花木槿           草間時彦
・底紅や黙つてあがる母の家             千葉皓史
・一日のまた夕暮や花木槿              山西雅子    (☆)

以上で重要季語12、例句32です。

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