【立葵・『カルナヴァル』②】
〈立葵〉
貧乏に匂ひありけり立葵 小澤實
以前は、「立葵」が取り合わせとして的確かどうか分かりませんでした。
『俳句の花図鑑』監修-復本一郎(成美堂出版)によれば、立葵は紅、紫、白などの大型の花弁をつけ、夏の日差しがよく似合うとあります。
私も「立葵」はそのようなものではないかと思っていました。
しばらくしてから「立葵」と「桃の花」の本情には近いものがあるのではないかと疑問を抱くようになりました。
つまり「華やいだもの(=花)」ではなく、「鄙びたもの」ではないかということです。
そうした仮説のもと、歳時記から例句を挙げてみます。
鶏鳴の終りかすれし立葵 山上樹実雄
夕刊のあとにゆふぐれ立葵 友岡子郷
立葵むかし傑物出でし村 木下もと子
見えて来し飛彈の人里立葵 野口康子
一句目は朝で淡紅か緋色、二句目は夕で白色、三句目は淡紅、四句目は薄紅か白ではないかと思います。
白といっても純白ではなく、多少傷みはじめている白ではないかと思います。
一句目は、鶏の充血した咽頭の色を考えると緋色と考えても良いかと思います。ただ「かすれし」の箇所にはさびしさが滲んでおり、やはり盛りを過ぎた緋色かと思います。
四句目は「うれしさ」が感じられ、比較的綺麗な白に近いかも知れませんが、それでも「人里」の影響もあり、やや鄙びた白です。
冒頭句の「貧乏に…」は白であり、傷みはじめているようです。
これらに共通することは、上記『俳句の花図鑑』にあるような、ぎらぎらした濃い紅や紫の「立葵」ではないということです。
夕空に匂ひありけり花木槿 山咲臥竜
拙句にて申し訳ありません。この「木槿」も白です。
白から濃い色まで様々な色の花弁を持つ植物に対し、俳句では基本的に白か淡い色を指すように思います。
こうして見てきますと、冒頭の句「貧乏に匂ひありけり立葵」も少しは理解が深まった気がします。
〈『カルナヴァル』②〉
最初に感じた抵抗感は薄れ、途中から比較的円滑に進み、とりあえず一読しました。
それでもあと二度ほどは読む必要がありそうです。
そのあと私なりに解釈・解析していくつもりです。
新かな・口語が多いので池田澄子氏を思い浮かべましたが、内容むしろは鳥居真里子氏を彷彿とさせました。早速、鳥居氏の句集『月の茗荷』を注文しました。
また句の前後に説明はありませんでしたが、ふと『年を歴た鰐の話』( レオポール・ショヴォ・ 山本 夏彦)を連想し、中古品を注文しました。
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