2013年7月25日木曜日

【角川『俳句』8月号より①】

〈記念作品5句『緑陰』金子兜太〉

(なし)

〈記念作品5句『牡丹八百』後藤比奈夫〉

(なし)

〈記念作品5句『海深く』鷹羽狩行〉


・白粥の湯気に香のあり今朝の秋


…「湯気」が少し気になりましたが、「立秋」によく合う素材を用いて、視覚・嗅覚を働かせています。


〈記念作品5句『五月晴』稲畑汀子〉

(なし)

〈記念作品5句『祝八百号』有馬朗人

(なし)

〈記念作品5句『海山』宇多喜代子〉

(なし)

〈記念作品5句『正面に』深見けん二〉


・浅間山を隠してそよぐ大夏木


…「戦(そよ)ぐ」は「そよそよと音をたてる」という意味ですが、「さやぐ;ざわざわと音がする。ざわめく」の方が適切でしょうか。

また順序が逆の方が動きが感じられそうです。「大夏木さやぎ浅間を隠しけり」など。

〈記念作品5句『夏木立』大峯あきら〉


・青葉木菟鳴いてこの谷行き止まり


…梟は閑散とした森に棲んでいそうです。「この谷行き止まり」では、ひらけた景となりそうです。

「青葉木菟」を下五に置き換えて、「これよりの森の深みや青葉木菟」「これよりは森深うなり青葉木菟」などとすると、景が安定しそうな気がします。

〈記念作品5句『楡大樹』宮坂静生〉


・帯広の楡の大樹を仰ぎ夏至


…「帯広」が眼目です。一般的に北海道以南では「夏至」は梅雨最中で、「冬至」に比べるとあまり感慨深いものではありません。その点、帯広ならば「夏至」に対する思いが出てきます。
短い夏を経て、また長い冬が近付きます。「夏至」は一年の折り返しの意味を持ちます。「楡の大樹を仰ぎ」も情・景としてよく合っています。
今回の「記念作品」群の中では、最も優れた作品だと思います。

〈記念作品5句『死も涼し』黒田杏子〉

(なし)

〈記念作品5句『睡蓮』鍵和田秞子〉


・昭和とほし皿に音たて枇杷の種


…今回の「記念作品」群では二番目に優れた作品だと思います。情・景ともにしっかりしています。懐かしさを感じると共に、当時の記憶がよみがえってくるようです。


〈記念作品5句『樹林帯』矢島渚男〉


・引き込んでゆく蟻達の穴黒し


…焦点が「蟻(達)」か「(蟻の)穴」か、やや定まっていない気がします。穴の内部を窺わせる措辞が欲しいところです。「引き込んで静かなりけり蟻の穴」など。


〈記念作品5句『大樹海』和田悟朗〉

(なし)

〈記念作品5句『涼しさ』茨木和生〉

(なし)


〈暗唱句〉

時候〈秋の暮-三秋〉

・此の道や行く人なしに秋の暮            芭 蕉

・貌見えてきて行違ふ秋の暮             中村草田男
・秋の暮大魚の骨を海が引く             西東三鬼     (☆)
・百方に借ある如し秋の暮              石塚友二
・あやまちはくりかへします秋の暮          三橋敏雄

天文〈名月-仲秋〉


・名月や畳の上に松の影               其 角

・すらすらと昇りて望の月ぞ照る           日野草城     (☆)
・名月や打上げられし磯の草             石塚友二
・干網の目を満月のあますなし            金箱戈止夫
・名月や石の下なる蚰蜒蜈蚣             高橋睦郎

地理〈初潮-仲秋〉


・初汐や旭(あさひ)の中に伊豆相模         蕪 村      (☆)


以上で重要季語27、例句75です。「地理」は一旦終わりにします。

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