2013年8月22日木曜日

【俳句用語と一般用語②】

「雷」と「稲妻」


「雷」は夏の季語です。春は「春の雷」、冬は「冬の雷」(「寒雷」)です。
「稲妻」は秋の季語です。
つまり秋以外の三季は「雷」ということになります。

さて「雷」と「稲妻」の違いは何でしょうか?

『角川俳句大歳時記』の夏・秋より「雷」と「稲妻」の解説を引用します。

「雷」…空中に上昇気流が発生すると、雲の上方と下方で放電が起こる。一瞬のエネルギー放出が見せる光が稲妻、音が雷鳴。上空が冷え、地表付近が高温多湿のとき発声するので夏に多い。日雷は晴天の雷。晴天の霹靂は晴天ににわかに起こる雷のこと。


「稲妻」…空中電気が放電されることによって閃く電光を稲妻という。遠くのために雷鳴が聞こえず、光だけが見える場合や、雨を伴わないものをさすことが多い。雷は「神鳴り」、つまり音が中心に考えられたのに対し、稲妻は光に注目した季語である。昔の農民は、この現象が稲の出来に深い関わりがあると考えた。すなわち、稲がこの電光によって霊的なものと結びつき、実るのだと信じていたのである。そこから稲の伴侶→稲夫→稲妻と転じたものと思われる。


「稲妻」の場合、稲作文化に基づいた風習が深く関わっていることは分かります。

「雷」の場合は「音」ー「雷鳴」を、「稲妻」の場合は「光」ー「稲光」を念頭に置く必要があります。

しかしながら夏と秋は隣り合った季節であり、実際には「音」と「光」だけでは両者の区別は困難と思います。


ここまでは俳句の話です。

それでは一般の方はどのように認識しているのでしょうか?

まずはWikipediaより引用します。

「雷・稲妻」…雷に際して起こる稲妻であり、雷電の「電」である。それに対して雷に際して起こる雷鳴であり、雷電の「雷(らい)」である。光と音を伴う雷放電現象を雷電と呼ぶ。現代日本語でいう雷は雷電とほぼ同義語であるが、遠方で発生した雷は光は見えるものの、風向きの影響などで音が聞こえない事がある。そのため、日本式天気図においては「過去10分以内に雷電または雷鳴があった状態」を雷としている。気象庁の定義によると「雷」とは「雷電(雷鳴および電光)がある状態。電光のみは含まない。」とされている。…と両者の区別は定かではありません。


英語ではthunder”は「雷鳴」、「稲光」は“lightning”、音と光の双方を伴う「雷電」は“thunderbolt”とされています。

ただ一般用語としては、区別は曖昧かと思います。

たとえ秋でなくても日本人は「稲妻」が好きなようです。「イナヅマ」の濁音の効果もあるでしょう。

私の知る範囲での雑学です。
まずは「アリス」の歌「冬の稲妻」を思い付きます。「稲妻」と言いつつ、歌詞の中には“♪ You're rollin thunder …”とあり、英語の部分は「雷鳴」になっています。
元ジャニーズの男闘呼組(おとこぐみ)の歌詞のサビに「♪冬の稲妻ー」とありました。

プロレスでは元・プロレスラーの木村健吾氏(愛称;「稲妻戦士」)の「稲妻レッグ・ラリアット」(後に「稲妻継承」へ)。
実写ヒーローものでは、「イナズマン」(二段階変身?変態?-一定時間は「サナギマン」)。
ゲーム(漫画)では「イナヅマイレブン」など…

「雷」は英語で使われることが多いようです。

プロレスラーでは故・「サンダー杉山」、「獣神サンダー・ライガー」。
漫画では「リングにかけろ」の「志那虎一城ローリングサンダー」。「聖闘士星矢(Ω)」の「シャイナ」の「サンダークロウ」など…

漢字の場合、筆頭は伝説の力士「雷電」でしょう。

漫画では「魁(暁)!! 男塾」の「三面拳」の一人、「雷電」など…

という訳で、一般の方はさほど「雷」と「稲妻」を区別していませんが、一般社会においては、俳人はうまく聞き流す方が良さそうです。


次回は季語ではなく、「香(かをり、かほり)」と「にほひ」について話をしたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿