2013年5月9日木曜日

【詩型への挑戦】

拙句集『原型』に多くの御意見・御感想を戴き、心より感謝しています。

中でも版元の「ふらんす堂」編集長・山岡喜美子氏の句評([exblog]美人の特典。bit.ly/143kqcb )は研ぎ澄まされた刃のようです。

全てを見透かされているようで、あたかも「因幡の白兎」のように、皮を剥かれ醜悪な肉塊を晒すのみといった心境です。

ところで冒頭句については評価が割れています。

・壺焼の腸勾玉の原型か

原句は「壺焼の腸勾玉と思ふべし」でした。
個人的には「思ふ」という言葉が好きではありませんでした。
また先に句集名を『原型』としていたこともあり、このまま出しました。

「壺焼の腸勾玉の原型か」を分解すると、十七文字のうち、体言(名詞)が十四文字、助詞が三文字です。

作句においては、「活用しない自立語」(名詞、副詞、連体詞、接続詞、感動詞)と「活用しない付属語」(助詞)の組み合わせを良しとする向きはあります。
「壺焼の腸勾玉の原型か」はその極限かと思います。

当初は窮屈な感じは拭えず、仕損じたと思いました。
しかし原句の「壺焼の腸勾玉と思ふべし」は、「可」ではあっても「優」ではありません。
60点を着実に稼ぐより、ここは0点か100点かという賭けに出ても良いのではないか、と思うようになりました。

俳句という詩型における一つの挑戦かも知れません。
現時点でも評価は割れていますが、本格的な評価には時間が必要です。

ただ句集名の「原型」という言葉には私なりに多層的な意味を込めており、また冒頭句でもありますので、強烈なインパクトのメッセージとして、成功か失敗かは別にして、これで良かったと思う次第です。

〈暗唱句〉

生活・行事〈虫干-晩夏〉


・百千の指紋の躍る書を晒す            竹下しづの女

・あぶな絵もまじり医(くすし)の土用干      加古宗也     (☆)
・死語となる言の葉多き曝書かな          三谷秋子  

動物〈火取虫-三夏〉


・幽明へ落つる音あり灯取虫            飯田蛇笏
・金粉をこぼして火蛾やすさまじき         松本たかし    (☆)

植物〈楝の花-初夏〉


・栴檀の花ちりかけて雲津川            北 枝
・むら雨や見かけて遠き花樗            白 雄
・花樗霧吹く如き盛りかな             西村和子     (☆)

これで重要季語77、例句206です。

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